連載ブログ 音をたずねて

30人乗りのバス

2013年05月01日

朝食の後も撮影に市内を歩いていたらあっという間にランチの時間になりました。ちょうどバスとの待ち合わせが港でしたので、船上レストランで食事をする事になりました。

港に接岸している大型の遊覧船の上がレストランでした。地上のレストランと殆ど変わらない価格で少し贅沢している気分を味わえました。鰯のフライに山盛りのマッシュポテト、酸っぱいリンゴン(コケモモ)のジャムが添えられています。さすがに海に近いだけあってとても美味しいランチでした。時間待ちで、1時間ほど食事をしているとバスが着いたとの連絡でさっそく船を下りました。

車はどこだろうと見回していると、この目の前の大きなバスが用意された車だと知らされました。ええーと驚きながら全員車に向かいます。

広いのはありがたいのですが、30人は乗れるバスにたった6人です。事前の話では8人乗りのVANでしたので事情を聞くと、予定していた車が故障で急遽同じ予算でこのバスを出してくださったようです。いつも狭い車に皆で乗っていますので全員どことなく落ち着かない様子でした。まずは出発して始めにここからそう遠くない農家を見せていただく事になりました。

幸運な撮影

大型バスで走ること30分ほどで村のような場所に着きました。

可愛い小さな子供を連れた女性が歩いている横を挨拶しながら通り過ぎると、1件の農家につきました。出迎えてくれたのはこちらも可愛い女の子と山羊でした。

私たちが大きなバスから降りているのを見たのでしょう。少し離れたところから興味深そうに私たちを見ていました。コーディネーターのやすこさんが事前に、このお宅に見学の許可をいただいているようでした。

近づいていくと、まず山羊くんが挨拶にやってきました。けっこうな角を持っていて、早足で近づいてきましたので少しひやひやしましたが、ただの挨拶だったようです。

とても綺麗な馬も寄ってきました。私たちは比較的動物になつかれるようです。

山羊や馬に見とれてる間に少女達は納屋の掃除を始めていました。たぶん年齢は7~8歳くらいだろうと思うのですが大きな箒を上手に使って、仲良く一生懸命掃除をしていました。スウェーデンではこんな小さな頃からちゃんと仕事を持たせるのだと感心しました。

気がつくともう1人少し年長と見受けられる少女も庭の藁を掃いていました。

子供達を見ている私たちの横を鶏が元気よく走り抜け、狭い柵の下を器用にくぐり抜けて行きました。

気がつくとさっきの少し年長の少女が皆の藁を集めて藁置き場に置きに行っていました。この作業の間大人はどこにも見かけませんでした。子供達がそれぞれ自分のやることをわかっているような行動でした。

声がするので振り返るとさっき出迎え、掃除をしていた少女がウサギを抱えて私たちに見せにきてくれました。バスを降りてからあたふたしている私達を横目で見ながら少女達は自分のするべきことをすませて、私たちの相手をしてくれているようでした。そのきびきびした動きと大きな道具をぎこちなく動かし一生懸命働いているけなげさにとても気持ちの良い感動を覚えました。

少し離れたところに彼女たちのお母さんがいらっしゃいました。コーディネーターのやすこさんが紹介してくださいました。こんなに近くに母親がいるのに彼女たちはまったく気にせず、自分達の仕事、掃除と動物の世話をしていました。スウェーデンは男女同権の国、街でも男性と同じように働く道路工事の女性作業員を見ました。福祉が充実する社会を作るには1人1人の義務と権利の認識、市民意識がとても重要だと思います。少し買いかぶりかも知れませんが、小さな頃から分け隔て無く皆で自分の責任をはたす教育を実践する社会を見せていただいたような気がしました。ほんの1時間足らずの撮影でしたがとても素晴らしいものを見せていただいたと思います。

次回はスウェーデンの豊かな森の生活のお話しをいたします。どうぞおたのしみに。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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