おとぎ話に出てくるような場所
スウェーデン、ダーラナ地方のスンド・ボーンという町のすぐそばにスウェーデンを代表するアーティスト、カール・ラーション(Carl Larsson 28 May 1853 -1919)を記念してカール・ラーション・ガーデンという資料館があります。周りの住宅地も当時の風情をそのまま残した美しいエリアでした。ラーションは油彩、水彩など多くの作品を残しており、日常生活風景の幸福感が溢れるその作品は当時の多くの人々の共感を得たようです。
ラーションは「日本は芸術家としての私の故郷である」と述べるほど日本美術を好んだようで彼の暮らした家には錦絵、陶磁器、屏風等々、日本の美術品が多く飾られていました。そんなラーションが愛した定住地スンド・ボーンを探索しました。
ラーション記念館のあるエリアです。その精神を写したかのように美しいたたずまいをしていました。ダーラナ地方独特の建物の色と緑の森、そして青空を写す豊かな水面。まるでおとぎ話に出てくる村のようでした。時間が止まったように、なん百年も前から変わらない風景に見えました。景色に見とれていると年配のご婦人が、大きな如雨露で川から水を汲んでいるのが見えました。
犬も歩けば
さっそく、このご婦人に声をかけ写真を撮らせて頂くことにしました。
ご婦人のお宅にお邪魔しました。みごとな花園です。
庭中が花で埋め尽くされていました。特にバラとダリアは素晴らしく、まさに日常生活の中の幸福感そのままでした。
意外な品を発見
庭を探索していると目に止まったのがたぶん1950年代生産と思われるフォードのマーキュリー。とても綺麗に保存されていました。よほどのマニアかご夫婦の記念すべき愛車なのだろうと思いました。
今でも乗られているようで中も素晴らしく綺麗に手入れされていました。ふと目を横に向けたら今度はホンダのバイクです。
バイクに詳しくないので型式はわかりませんが、こちらも綺麗に手入れされていてピカピカでした。今でも走っていそうです。この他にも数台のバイク。どうやらご主人の趣味のようでした。
今回のご褒美はダリアでした
すっかりお世話になって、家事の手を止めさせてしまったのに、ご婦人はそんな事を気にせず、我々の来訪を喜んでくださいました。植物好きのCD新村さんは庭の花を沢山分けてもらい、とてもご満悦。新村さんの植物好きが伝わったのかもしれません。ご婦人と一緒に記念撮影です。
この時に撮影した青い空に黄色い大輪のダリアがBGM8スウェーデンのメインビジュアルになりました。撮影隊の仕事はいつもその場の状況に対応した形で行います。事前ロケハンがないので常に行き当たりばったりで、そういう意味では大変な仕事です。スカイブルーに黄色のこのメインビジュアルはご婦人の家の玄関に掲げられていたスウェーデン国旗がモチーフのようでした。私もスウェーデンらしい素敵な写真だと思っています。犬も歩けば棒にあたる。足で稼ぐしかない仕事ですね。
「日常生活風景の幸福感」現代人がともすると忘れがちな大切な感覚だと思います。人と人が豊かに集う当たり前の生活。虚勢を張ることもいたずらに頑張ることもなく、あるがままに丁寧に暮らすことの豊かさを垣間見た気がした。まさに現代のおとぎ話のような生活がスンド・ボーンにはありました。次回はこのエリアにあった小さな鍛冶屋さんの話しをします。どうぞお楽しみに。