各国・各地で 旅の徒然雑記帳

日々是好旅也

2017年07月05日

みなさま、お久しぶりです。
自転車世界一周Found紀行風のしまたびで国内外をあっちへ、こっちへとを旅してきた伊藤篤史です。

日本の秘境とも言えるトカラ列島のブログ更新から三ヶ月以上経ってしまいましたが、相変わらず僕は元気に旅を続けています。

初めての夜行列車サンライズ瀬戸で香川県の小豆島に行ったり、春の欠片を探して房総半島を走ったり。つい最近だと愛知県の山奥でアースバッグハウス作りに挑戦中の友人を訪ねてきました。

アースバッグハウスとは簡単に言えば、土地を耕し、耕した土を土嚢にして積み上げたエコフレンドリーな家です。この家作りをしている友人の鈴木タカは僕と同じ時期に自転車で世界一周を達成した旅の同期みたいなもの。そんな彼が次の夢に選んだ田舎暮らしに触れることで僕も大いに刺激を受けたのでした。

8年振りに訪れた小豆島でも新しい夢へ邁進する人との再会をしました。カヤックガイドの山ちゃんは僕に瀬戸内の海を教えてくれた恩人です。あの時、山ちゃんが話してくれたことをよく覚えています。
「近くに古民家を手に入れたんです。そこを改装して仲間たちとカフェでもやりたいなぁ」
山ちゃんはその夢をしっかりと形にして、カフェ「タコのまくら」をオープンさせたのでした。そういえば、山ちゃんから毎年届いていた年賀状には、必ずタコのイラストが書かれていたことを思い出します。タコのまくらで食べるランチの瀬戸内らしい穏やかで優しい味に、思わず心がほっこりとしました。

ふらりと出かけた房総半島の旅では、とある古いトンネルでたまたまオートバイ雑誌の撮影に鉢合わせになり、図らずしも雑誌デビューを果たしてしまいました。僕は自転車だったのに(笑)
取材チームと立ち話をする中で、とあるバイクライダーの名前が出てきて驚きました。なぜならその人物に僕はナミビアの砂漠のど真ん中で出会っていたからです。ナミビアと房総半島。全く接点が見えない土地と土地を、旅が結んでくれたのでした。

こうして最近の旅を簡単に振り返ってみただけでも、過去の旅が新しい旅の呼び水になっていることに気が付きます。
他の人よりも、ずいぶん色々なところに足を運んできました。けれども、行ってみたい場所は枯れることはないし、良い思い出が残るところには二度三度とまた訪れてみたい。季節を変えれば、同じ土地でも見え方はがらりと変わるし、そのときの心情によっても変わってくる。旅はすればするだけ、次なる旅が広がっていくのだからやっぱり面白いなぁと思うのです。

旅を続ける一方で、僕の周辺環境も数年ぶりに大きく変わりました。
このブログをご覧になっている方にとっては「やっぱり」とか「だろうね」と思われるかもしれませんが、そうなんです、実は会社(良品計画)に復帰をしました。
復帰の大きなきっかけになったのは、昨秋MUJI to GO KITTE丸の内で開催されたイベントでした。イベントでは旅道具の展示や、旅道具についてのトークショーを行ったのですが、改めて使い込んだ旅道具たちと向き合ったとき、道具やモノを向こう側に旅の情景や物語が広がっていることが、とても無印良品的な感覚のように思えたのでした。

世界一周を導き、数々の出会いを繋いでくれたのは自転車という道具であったし、向こう数百kmに渡って街のない大平原に挑む勇気を与えてくれ、そして僕を守ってくれたのはテントや寝袋を始めとするキャンプ道具の数々でした。

ご存知のように無印良品はモノを扱い、モノを通じてライフスタイルの提案を行うブランドです。無印良品にテントや寝袋はないけれど、これからも旅と関わることを続けていきたいと考えた時、ここで表現できる旅の世界もあると思ったのです。
旅は誰にでもできる、誰のものでもないものであるから、無印良品の持つ無名性や普遍性はとても相性がいい。無印良品と旅、これが今の僕の新しいチャレンジです。

6年前、僕は自転車世界一周をやりたいと思って会社を辞めました。今は無印良品で旅の世界観を作っていきたいと思ったから会社に戻りました。従業員と会社がフラットな関係性でいられたら、多様な経歴を持つ人たちが集まってくるでしょうし、様々な経験値を積んだ人たちが戻る受け皿にもなって、会社をもっと盛り上げることができるんじゃないかと思ったことも理由の一つです。

とはいえ、数年ぶりにちゃんと働くとなると、やっぱり色々一から勉強し直さなければなりません。すっかり仕事のやり方を忘れていてしまっていて、戸惑うこともしばしばです。今は東京の丸井吉祥寺店無印良品で働いていますが、大きな店舗ということもあり、あらゆることが目まぐるしく展開していくので付いて行くだけで必死です。

ただ、忙殺するような日々の中で、気付きもありました。
先日、札幌に住む旅仲間が東京に遊びに来たときのことです。お花見をしようと集まった我々でしたが、残念ながら冷たい雨が降っていました。ここで普通ならば、諦めてレストランやカフェにでも入ってしまうところなのかもしれませんが、僕たちは少し歩いたところに屋根があって雨風が凌げる公共のテラス席を発見することができました。
「もし、ここでテントを張れるなら一等地だね。あ、あの窪みならもっと風を凌げそうだよ」なんて旅人ならではの冗談を言いながら、向かいのコーヒーショップで買ってきた暖かいコーヒーをちびちびと大切に飲む。旅の宿で、みんなで夕ご飯をシェアしていたときのように、互いに持ち寄った軽食を分け合って、「美味しいね!」と時間を共有する。あぁ、こういうのがいいなぁ、日常の中にも旅の感覚ってあるなぁと強く思ったのでした。

旅をしていたあの頃と違って、今でこそ1円や10円の節約に血眼になる必要もないのかもしれませんが、お金でなんでも解決してしまう東京のコンクリートジャングルの中だからこそむしろ、お金ではない方法でその状況を楽しめてしまうことに価値があるのだと思いました。そういうことを共有できる仲間が仕事とは別なフィールドにいる、それだけで仕事に埋没しないでいられるような気がします。

さて、少し長くなってしまいましたが近況をお伝えしました。しばらく大冒険のような旅は難しいかもしれませんが、冒頭にも書いたように、時々の休みを利用して小さな旅はこれからも続けていきたいと思っています。
そんな旅の話はもちろん、旅の道具や小技の紹介、日常の中で見つけた旅のエッセンスなどをざっくばらんに書いていきたいという思いもあり、この新しいブログタイトルは「旅の徒然雑記帳」としてスタートしました。
この場所を通じて旅をもっと身近に、もっと身軽に感じてもらえたら嬉しいです。

このブログが更新される頃には僕は、少し早めの夏休みということでロシアのサハリン島を旅していることでしょう。世界一周をしていた頃にはVISAの壁に跳ね返されてきた遠い遠い国。いったいどんな旅になったのかは、このブログでもご紹介していきますね。
それではみなさまもどうぞ良い旅を!

追伸:お買い物でなくとも、ブログの感想や旅のご相談があれば是非、丸井吉祥寺店無印良品にどうぞ足をお運びくださいませ。7月の丸井吉祥寺店では、イベントスペースにて様々な旅の企画展示を行っています。7月16日(日)のイベントでは僕も旅の話をしますので皆様のお越しを心よりお待ちしております!

  • プロフィール 無印良品スタッフ。自転車で世界一周後、復職しました。

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