足は、知っている
日常生活の中で、私たちは、歩くという動作を何気なく行っています。でも、歩きはじめたばかりの赤ちゃんを見ると、「歩くこと」がどんなに大変なことかに気づかされます。今回は、その歩くことを支えている足について、考えてみたいと思います。
足は第二の心臓
足は片足26個(種子骨を加えると28個)の骨と、筋肉、腱、じん帯、血管、神経などから成り立っています。数でいえば全身の骨の4分の1が足に集まり、また、足にある血管と神経をつなぎ合わせると数キロメートルにも及ぶとか。
足は全身を支え、歩行という運動をつかさどると同時に、筋肉のポンプで血液を心臓に送り返す循環器の役割も果たしているのです。
足の裏の感覚
2本の足で立ち、歩くとき、体の中で唯一地球に接しているのは足の裏。足の裏は、単に体重を支えるだけではなく、触覚や圧覚などを感じる重要な感覚器官でもあります。
素足に触れる芝生や砂を心地よいと思い、足になじまない靴を脱ぎたくなるのも、この感覚があるからなんですね。散歩をしているときの犬が、アスファルト舗装の道より土の上や草の上を好んで歩くのも、同じように、足の裏で何かを感じ取っているのでしょう。
裸足で感じる
2百万年とも数百万年ともいわれる人類の長い長い二足歩行の歴史の中で、履物をはくようになったのは、約4千年前。古代エジプトの特権階級がサンダルをはいたのがはじまりとされますが、それまでずっと、人類は裸足で生存してきました。素足で芝生や砂の上を歩くときの解放感は、私たちの意識下に埋め込まれている遠い記憶が呼び起こされるのかもしれません。
1960年のローマオリンピック、マラソンのアベベは裸足で42.195kmを走り抜いて金メダルを勝ち取りました。今でも、ヒマラヤのシェルパは、裸足で踏ん張りながら重い荷物を背負って雪の山道を登るそうです。
裸足で大地をつかんで動くことは、人間が本来もっている大きな力を引き出すのかもしれません。
いつの間にか、裸足で歩くことを忘れていた私たちですが、たまには裸足で歩いてみるのもよさそうです。土の温もり、草の柔らかさ、アスファルトのかたさ......足の裏は、いろんなことを感じるでしょう。私たちの中で眠っていた五感が、揺り起こされるかもしれません。
とはいうものの、現代社会の中では、日常生活を裸足で通すわけにもいきません。足を解き放って少しでも快適に歩くには、せめて、自分の足が喜ぶ靴をはきたいものですね。