かたちとサイズについて
サイズについて考えると、洋服であれ家具であれ、使う人の体にぴったりと合うものが望ましいことは言うまでもありません。その一方で大切なのは、「かたち」。何かが自分に「合う」「合わない」というとき、サイズだけでなく、かたちが影響していることは多いものです。どんなかたちの中に自分の身を置きたいのか。そんなことにも、少し考えをめぐらせてみませんか。
物事にはすべて、かたちがあります。その中でも標準のかたちを追求してきたのが無印良品です。現在5,500アイテムの商品を提供していますが、そのすべてに標準形を目指してきました。
シャツはシャツらしく、イスはイスらしく──標準形を考えるときは、人の記憶の中にある原形のようなものを探していきます。そうして浮かび上がる原形をたぐり寄せていきます。多くの原形は、近代、つまり20世紀初頭の工業化の中で生まれたものですが、生活に密着したものは、もっと古い時代までさかのぼることもあります。
「無印良品の家─窓の家─」では、17世紀イギリスのコッツエルズ地方の家のかたちがお手本になりました。それは、絵本から飛び出してきたような町でした。三角形の屋根に小さな窓は、まさに、こどもが絵に描く家そのもの。そして、窓の周りをバラが飾っていました。誰がつくったのかは、わかりません。日常の暮らしの中から、自然に生まれたかたちだったのでしょう。
私たちは、近代の中で新しいかたちを追求するように教育されてきました。しかし、実際の人々の暮らしを眺めてみると、新しいものはほんの一握りで、古くから人々が生きてきた暮らしの中にこそ、標準のかたちがあるようです。
日本の中にも、名も知れぬ、しかし多くの人が使い続けてきた「かたち」があります。日々の食卓に上る漆塗りのお椀や、陶器の茶碗などは、その好例。微妙なカーブは、手に持ったときの安定感をつくります。
色も柄も、定番といわれるものには、安心感があります。織物の定番・絣は、日本人に最も好まれる普段使いの柄。にじんだような柄は、西洋の白黒はっきりした柄とは違うものですが、汚れも目立ちにくく、日本人の感性になじむものです。
標準のかたちとは、そうした、どこか懐かしい、見たことのあるようなかたちですが、最も原形に近いかたちは記憶の中にあることもあります。無印良品は、その原形を考え続けています。
これまで、サイズについてのコラムやテーマには、たくさんのご意見をお寄せいただきました。背の高い人、低い人、太っている人、やせている人......要望はさまざまです。そうしたご意見に対応しながら、その一方で、普遍的な標準のかたちを探していく。そんなことも、私たちの大事なテーマだと考えています。
なお、衣服のかたちとサイズについては、より多くの方に対応できるように全面的に見直しを行いました。この秋からは、「イージー」「レギュラー」「フィット」と着心地で選べる3つの型でサイズ展開します。詳しくはモニター報告をご覧ください。