研究テーマ

テーブルクロスと仲よく

インテリアを彩るアイテムのなかで、布が好きという方は多いのではないでしょうか。綿、麻、化学繊維と素材もいろいろで、表情、手触りもそれぞれに特色があります。さらに色、柄も豊富なのが大きな魅力。部屋を見渡してみると、カーペット、ラグ、カーテン、クッション、テーブルウェア、椅子、ソファの張地と、私達は本当にたくさんの布に囲まれて暮らしていると実感します。

「クロスがあると、ものが出ない」

部屋の雰囲気を変えたいとき、布は心強い存在です。家具はいちど買ったらなかなか変えられませんが、たとえばクッションカバーなら手に取りやすく、大がかりな作業も必要ありません。ソファに布をかけたりしても、気分が変わっていいものです。「おすすめなのはテーブルクロスですよ」。そう教えてくれたのは、テキスタイルデザイナーの須藤玲子さんです。「テーブルを覆いますから、部屋のかなりの面積になりますよね。ですからテーブルクロスを変えると、インテリアの雰囲気をガラッと変えてくれるんです」

たしかに小さなテーブルでもたいていは半畳くらいありますから、部屋に対するボリュームとしては大きいです。須藤さんのご自宅のテーブルは正方形で一辺が110センチ、四辺がたたまれていて、それをパタンパタンと持ち上げて固定すると円形になるタイプ。現在は夫と成人した息子さんと3人暮らしなので、ふだんは正方形で、お客様をもてなすときは円形にして広くするそうです。テーブルクロスは日常的なものというより、よそいきのもの、お客様を迎えるときに使うものという意識があるかもしれませんが、須藤さんは時間に余裕があるときは、なんと朝と夜とでテーブルクロスを変えるというのですから驚きました。「もちろん余裕のあるときだけですよ。でも、食事のたびにクロスを敷いて、外してという作業を日常に組み込むと、テーブルの上に何もなく、それは気持ちのいいものです。忙しくなるとテーブルクロスの登場が減って、あっという間に机の上には手紙、書類、パソコンなど、ものが居座ちゃう。クロスを敷こうと思えるかどうかは、時間の余裕でもあり、気持ちの余裕でもありますね」。

須藤さんが生まれ育ったのは古い日本家屋で、食事のときに毎回ちゃぶ台を出して、終わると片付けていたそうです。その手間に比べたらテーブルクロスはなんて楽だと思うんですよと笑いながら話してくれました。

食器と同じに考えてみる須藤さんにとってテーブルクロスは、一番はじめの場づくりであり、食器と同じような存在だそうです。この料理ならこの器、そしてこの布を合わせたらおいしそうだなと考えて、献立を組み立てていくのだとか。「習慣にしてしまうといいんですよね。そうすると、テーブルクロスは特別なものではなくて、タオルと同じように日常に欠かせないものなっていきます。

テーブルクロスが大仰だと感じるのであれば、まずはテーブルランナーを取り入れてみてはいかがでしょうか。テーブルの中央に敷くといいアクセントになりますし、ランチョンマットと組み合わせるのもおすすめです」須藤さんはテーブルクロスの下にはアンダークロスを敷くそうです。テーブルクロスの滑りどめになりますし、飲みものなどをこぼしてしまっても、テーブルにしみ込んでしまうのを防ぎます。テーブルクロスは使うたびに洗いますが、裏方であるアンダークロスは毎回は取り替えないそうです。ものを大切に扱い、永く使う須藤さん。テーブルクロスも古いものは80年代から使い続けているそうで、穴が開いていたり、透けている箇所があったりするけれども、新品にはないいい味わいが生まれているのだとか。もちろん、いまも立派に現役で登場させているとのことです。

「干す前にかければ」

テーブルクロスにハードルの高さを感じるのは、アイロンの手間かもしれません。アイロンをかけてもなかなかシワが取れなかったり、シャツのように立体的ではないとはいえ、面積が広くて面倒だったり......。「それはね、乾いてからアイロンをかけるからではないでしょうか。私は洗濯機から出したら、干す前にアイロンをざっとかけます。それから干せばシワなしですよ。私はハンカチやシャツもアイロンをかけてから干しています」また、たたむと折りじわがつきますが、麻以外の素材なら手で伸ばせば気にならなくなることも教えてくれました。この方法ならできそうに思えて、さっそく試してみました。150×170 センチの、薄手の麻のテーブルクロスです。アイロンがけには5分かかりませんでした。水分を均一に含んでいるからでしょうか、いつもなら霧吹きで水をかけて「のびろ、のびろ」と念じながらかけるのに、スルスルといとも簡単にシワが消えていきます。それをべランダで干したところ、よく晴れた日ということも手伝ってですが、40分ほどで乾いたのも「アイロン先がけ効果」なのだと実感しました。いいことずくめの手順なのだと実感できました。

忘年会や新年会をご自宅で、という方もいらっしゃると思います。ぜひ布(テ―ブルクロス)を取り入れて、普段とは違う時間をおすごしください。

研究テーマ
衣服