保温中は調理中
寒いこの時季、じっくり煮込んだスープや煮物は、気持ちまで温めてくれるご馳走ですね。コトコト煮える鍋の音が、お母さんの手料理の思い出と重なる方も多いことでしょう。
煮込み料理のコツは「弱火で長時間」と言われますが、みなさんは気軽につくっていらっしゃいますか?
忙しくて、そんな時間はないという方もあるでしょう。火をつけている間、キッチンから離れられないのが嫌という方もあるでしょう。煮込み料理を億劫と感じてしまうのは、「火を長時間使う」ことと関係がありそうです。
余熱を活かして調理する
でも、火を止めた状態で調理ができるとしたら......煮込み料理のハードルは、かなり低くなりそうですね。
当コラム「保存食」への投稿の中に、「魔法瓶に熱湯と豆を一晩入れて煮豆をつくっている」という方がありました。
同じ原理で、余熱を利用して料理するのが「保温調理」。ひと煮立ちした後のお鍋を火から下ろし、熱を逃がさないように保温しながら仕上げる方法です。
加熱時間が短いので省エネになるのはもちろん、「お鍋の見張り番」をしなくてすむから時間の節約にも。外出前にさっと仕込んだシチューを帰宅後すぐに食べる、なんてこともできてしまいます。
保温調理は、おいしい
時間やエネルギーの節約だけではなく、保温しながら調理するとおいしくできるのをご存知ですか?
食材に味が染み込むのは、実は「冷めるとき」。火から下ろしてゆっくり温度を下げていく保温調理は、おいしさの上でも理にかなった方法なのです。
また、長時間加熱のように香りや旨みが逃げたり、栄養素が壊れたり、食材が硬くなったりしないことも、おいしさにプラス。子持ち鰈の煮付けなどは、腹の卵にしっかり火が通っているのに身はしっとりやわらかいという、プロ並みのでき上がりを楽しめます。
保温調理のいろいろ
バスタオルや毛布で
もっとも手軽な保温調理の方法は、加熱後のお鍋を火から下ろし、厚手のバスタオルや毛布でくるむことです。
切る大きさや野菜の種類にもよりますが、根菜類の煮物なら、沸騰後弱火で3分~5分煮た後バスタオルで15分~25分くるむと、中までしっかり味が染み込みます。
保温調理鍋で
保温調理専用のお鍋も出回っています。真空の魔法瓶タイプとスカートをはかせて空気層をつくるタイプの2種類ありますが、いずれも内鍋と外鍋の二重構造。直火にかけて加熱後、前者は外鍋の中に内鍋をセットして、後者は外蓋をして、一定温度を保つというものです。保温中はとろ火効果があり、数時間は温め直さなくても食べられます。
お鍋のカバーで
保温調理専用鍋の簡易バージョン。断熱材などを入れ込んだ多層構造のカバーでお鍋をすっぽりくるむ方法です。おくるみを被せることで、手持ちのお鍋をそのまま保温調理器に変身させてしまうスグレモノ。保温効果も、スカートタイプの専用鍋と比べて、そんなに遜色はないようです。
煮込み料理は時間と気持ちに余裕がある時でなければつくれない、と思っている方は、結構多いようです。
でも、保温調理を組み込んでいくと、気軽につくれそうな気がします。
みなさんは、日々の食事づくりの中で、どんな工夫をなさっていますか?