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旬を味わう ―野菜の花―

陽光を浴びて黄金色に輝く菜の花畑は、春の風物詩です。ところで、この菜の花、実は野菜の花だということをご存知でしたか? 観賞用に温室栽培する花とは異なり、露地野菜の花は、季節をそのまま映すもの。今回は、これから夏にかけて旬を迎える野菜の花を味わってみましょう。

菜の花の仲間たち。

菜の花は、別名アブラナ。種子から油(菜種油)をとるために、紀元前から世界中で広く栽培されてきた野菜です。蕾や脇芽は「菜花」「花菜」と呼ばれ、おひたしや和え物などに。
同じアブラナ科の野菜には、コマツナ、ミズナ、ハクサイ、カブ、キャベツ、大根、カリフラワー、クレソン、ワサビなどがありますが、どの花も十字架のような形をした花弁が特徴です。野菜としての姿かたちは違っていても、花を見ると、縁戚関係は一目瞭然。菜花と同じように、アブラナ科の野菜の花は、基本的に食べられるそうです。

野菜の花は、美しい。

まるで蝶が舞っているように優雅に咲くのは、サヤエンドウやインゲンなどマメ科の花。アザミによく似た花をつけるのは、ゴボウ。オクラは、アオイ科ハイビスカス属だけに、ハイビスカスやフヨウに似た大きな5弁の花を早朝に開きます。同じく早朝に開くのは、ハスの花。食用になる地下茎のレンコンからは想像もつかない美しい花で、お釈迦様が座す蓮台はこの花を模したものです。
黄色の大きな花をつけるのは、カボチャやズッキーニ。茎の先端に白い小さな花が群がって咲くニンジンは、花火のようにも見えます。

シュンギクは、春に咲く菊の意味。野菜として食用にするのは日本や中国など東アジア地域だけで、ヨーロッパでは花として観賞用に栽培されているそうです。
同じように18世紀のヨーロッパで観賞植物として愛されたのが、ジャガイモ。ルイ16世の王妃マリー・アントワネットはこの花をこよなく愛し、よく髪飾りに使ったといいます。品種によって花色が異なり、男爵は白に薄紫がかった花、メークインは赤紫、農林1号は白といった具合。北海道では、ジャガイモのお花見が年中行事になっている地方もあるそうです。

生きるために、花が咲く。

親の意見と茄子の花は、千にひとつの無駄もない──茄子は咲いた花の数だけ着実に実を結ぶ、という諺です。
野菜が花を咲かせるのは、実を結ぶため、あるいは種を残すための、生命の営み。お店で野菜を買うだけの生活をしていると、こんなあたりまえのことを、つい忘れてしまいがちです。野菜の花に目を向けることは、野菜の生命そのものに目を向けることと言ってもよいでしょう。

野菜の花は、花屋さんには売っていません。実を結ぶ前や収穫後の畑で咲くので、いつでも簡単に見られるものでもありません。
でも、自分で野菜を育てるとなると、話は別。たとえ小さなプランターの中でも、野菜は花を咲かせてくれるでしょう。それを見る楽しみは、野菜を育てるひとに与えられたご褒美と言えるかもしれません。
野菜づくりはしないまでも、大根のヘタを水につけ花を咲かせて楽しむ人もあります。散歩の途中で、野菜の花を探しながら歩いてみるのもいいですね。

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