研究テーマ

夏野菜

梅雨が明ければ、いよいよ夏本番。節電をしながら少しでも涼しく、と考えていらっしゃる方も多いことでしょう。クールビズなどさまざまな暑さ対策がとられていますが、食の面から工夫できることもありそう。身体の熱をとり水分を補給してくれる夏野菜をおいしく食べて、この夏を元気に乗り切りたいものです。

夏野菜でクールダウン

梅雨が明けると、夏野菜の本格的な収穫期。ナスやキュウリ、トマト、ピーマン、オクラ、ゴーヤ、ツルムラサキなど、梅雨の間は生長を止めて雨に耐えていた野菜たちも一気に勢いづいて育ちます。暑さをものともせず育つ夏野菜は、エネルギーにあふれ、ミネラル豊富で水分たっぷり。暑さで疲れた身体が、熱をとり水分を補給してくれる夏野菜を求めるのは、ごく自然なことなのです。特にウリ科(キュウリ、ズッキーニ、ゴーヤ、冬瓜など)やナス科(ナス、ピーマンなど)の野菜は、夏の暑さをやわらげる働きがあるとか。マクロビオティックでも、ウリ科やナス科の野菜は身体を冷やす「陰性」の食べものとしています。ほとんどの夏野菜の故郷(原産地)は暑い国ですから、天然の冷却材として、大自然からプレゼントされたものなのかもしれませんね。

緑のシェードにもなるゴーヤ

節電への取り組みが日常的になりつつある昨今、日除けのためにツル性植物を育てていらっしゃる方も多いでしょう。中でも人気が高いのは、ゴーヤ。日除けとしてだけでなく、実を収穫して食べられるのがその理由です。
苦瓜(にがうり)の別名を持つようにゴーヤには独特の苦みがありますが、この苦味はモモルデシンという成分。胃液の分泌を促して食欲を増進させ、肝機能を高め、血糖値を下げる効果があるといわれます。またビタミンC、カリウム、カルシウム、マグネシウムなども豊富で、そのビタミンCは加熱しても壊れにくいのが特長。夏バテ解消にはうってつけの野菜といえそうです。豆腐や豚肉と炒めるゴーヤチャンプルがよく知られていますが、酢の物、天麩羅、ジュース、ゴーヤ茶など、メニューはいろいろ。実の3倍以上のビタミンCが含まれているという「ワタ(中心のふわふわした白い部分)」の天麩羅も、おいしいそうです。苦味が苦手な場合は、軽く塩もみするか熱湯をくぐらせる、あるいはさっと茹でるとよいでしょう。

ハシリとナゴリ

ひとくちに旬といっても、出はじめのハシリ(走り)と盛りを過ぎて終わりに向かうナゴリ(名残)では、味が違うことをご存知ですか? ハシリは皮が薄く水分が多いのですが、ナゴリになると皮は堅く張って水分も減ってくるのです。
たとえば、トマト。旬の終わりが近づくと、同じ苗木でも上の方の実は小さくなり皮も堅くなりますが、その一方、味は濃厚で甘くなります。これは、種を残すために自然と水分が切られて身が締まり、糖化するから。次の世代に命をつなぐため、糖度を増して栄養を蓄え、鳥などの外敵から身を守るために皮を堅くしているのです。
「この変化の大きさが夏野菜の魅力」と語るのは、東京中央区でレストラン専門の青果店を開き「野菜の達人」として知られる内田悟さん。その著書によれば、「ハシリの季節のものは火入れしすぎると色や香りが飛びやすいという繊細さを持ち、時期がたつにつれて次第に野太くなっていき、ナゴリには個性がせり出した深い味わいになる」のだとか。だから、それぞれの味わいを生かすために、旬のものでも時期によって調理法を変えることをすすめています。
包丁の入れ方は、基本的に「ハシリは縦切り、ナゴリは輪切り」。水分の多いハシリは、繊維を断つとアクが出やすいので、繊維に沿って縦切りするのです。火入れにも同じことが言えます。水分の多いハシリは高温で炒めて一気に水分を飛ばすと繊細な香りや旨みが生かされ、繊維が太く堅いナゴリはしっかり火を入れることで味が引き出されるといいます。
ハシリもナゴリも野菜の命の営みの一部。その時期その時期の味わいを自然の恵みとして「いただく」ことで、私たちの身体をつくるエネルギーにもなっていくのでしょう。

四季の移ろいの中で、気温と地温と湿度を感じ取りながら育っていく季節の野菜たち。その野菜と人の身体とは、どこかで深くつながっているような気がします。みなさんは、夏野菜をどんな風に楽しんでいらっしゃいますか?

研究テーマ
食品

このテーマのコラム