研究テーマ

お酢のチカラ

酢タマネギ、酢ショウガ、酢ニンニク…健康を気遣う人の間で、「酢」の付く食べものが話題になっているようです。お酢が身体によいということは、なんとなく知っていますが、食べたり飲んだりするだけでなく、掃除や洗濯などにも使えるということをご存知でしたか? 梅雨に入るこれから、お酢を上手に使いこなして、身体も暮らしも、きれいさっぱりさせませんか。

お酒からお酢

「す」を辞書で引くと、「酢」「醋」「酸」という漢字があてられています。「酢」と「醋」の字を分解すると、「酒から作ったもの」「昔、酒だったもの」と読めるように、「す」とはお酒が変化して酸っぱくなったもの。英語で酢を意味する「vinegar(ビネガー)」も、フランス語の「vin(ワイン)」と「aigre(酸っぱい)」が合体してできた言葉だそうです。
食酢の主成分は酸っぱさのもとである酢酸(さくさん)ですが、それは、目に見えない微生物、酢酸菌がお酒の主成分であるアルコールを食べて生み出したもの。酢酸菌は酢酸をつくる一方でブドウ糖を取り込んで発酵を促しますので、原料となるお酒の風味や発酵の風味が残り、単に酸っぱいだけではない豊かな香りや味わいを添えてくれるというわけです。

お酢のいろいろ

「酒のあるところに、酢が生まれる」と言われるように、どんなお酒でも発酵させれば酢になります。つまり、お酒の種類だけお酢の種類もあり得るわけで、その数は世界に4千種類とも。
ワイン造りの盛んなところではワインビネガー、ビールがよく造られるところではモルトビネガー(麦芽酢)、りんご酒からはアップルビネガー(りんご酢)、米の酒、日本酒からは米酢が生まれます。その土地でどんなお酢が使われているかは、そこで愛飲されているお酒から連想できそう。お酒と同じく、各地の気候風土が育んだお酢はその土地の食材とも相性がよく、さまざまな郷土料理を生み出す土台になっているといってもよいでしょう。

お料理のお酢、いろいろ

「いい塩梅(あんばい)」といえば、物事がバランスよく調うことですが、そもそもこの言葉は、塩と梅酢でほどよく味加減を調える意味。そんな「塩梅」をかたちにした「合わせ酢(加減酢、調合酢とも)」のいろいろをご紹介しましょう。
もっともポピュラーなのは、「すし酢」。酢飯を作るために、砂糖、塩、みりんなどで調味したお酢です。酢に醤油や塩で味付けすれば「二杯酢」で、酢と醤油と味醂(みりん)を同量ずつ合わせたのは「三杯酢」。三杯酢より甘めに作った「甘酢」はラッキヨウや魚介の南蛮漬けに使われ、さらに水溶き片栗粉でとろみをつけた「甘酢あん」は酢豚やカニ玉などでおなじみですね。
そのほか、酢に鰹節や昆布のダシと醤油・味醂を合わせた「土佐酢」、それに葛粉を加えてとろみをつけた「吉野酢」、卵黄を加えた「黄身酢」、裏漉しした豆腐やすり胡麻と酢を合わせた「白酢」、甘酢に味噌やからしをあわせた「酢味噌」などなど、バリエーションはいろいろ。ドレッシングやマヨネーズも、合わせ酢の一つといえるでしょう。

酸性なのにアルカリ性

お酢の酸味は、お酢に含まれる「水素イオン」によって感じられます。そして、水素イオンの働きで、それが溶けている水を酸性に傾けます。身の回りのさまざまな雑菌の活動を抑えたり、物質を溶かしたりという働きをするのも、この原理。
ところが不思議なことに、お酢はいったん人間の体内に取り込まれると、今度は身体の中をアルカリ性に保ってくれる性質があります。というのも、水素イオンはすばやく代謝され、一緒に運んできたお酢の中の有機分子と「カリウム」や「ナトリウム」などの「アルカリ金属イオン」のみが残って、体内バランスの回復に活躍するから。身体の外にあっても中にあっても、私たちを助けてくれるのが、お酢のチカラなんですね。

お酢の働き

「お酢の出番は、お料理だけではありません。酸性の性質をもつお酢には、

  • 1.いろいろな物質にしみこみ、ゆるませる「浸透・剥離(はくり)・溶解作用」
  • 2.身の回りの雑菌の活動を抑える「抗菌作用」
  • 3.アルカリ性のにおいを中和し、そのほか各種の悪臭を飛ばす「消臭作用」
  • 4.石けん分を溶かし、髪や肌、布地をいたわる「リンス作用」
  • 5.金属や生体内の酸化によるサビをとる「還元作用」

といった働きがあります。こうしたお酢のチカラを利用して、先人たちは、暮らしのさまざまな場面でお酢を使いこなしてきました。
まな板やキッチン用品を清潔に保つために、ご飯をふっくら炊き上げながら日持ちもさせるために、煮魚の生臭み消しに、大根おろしなどのビタミンCの破壊を防ぐために、里芋や山芋のヌメリ取りに、ガラス食器の汚れ落としや茶碗・急須の茶渋落としに、水アカやトイレの黄ばみ落としに、洗濯後の衣類に残った石けんカスを溶かすために、植物の水揚げに、革製品の汚れ落としに、畳や窓の掃除に、重曹と合わせて排水管のツマリを取るために…その活躍の場の広さには、驚くばかりです。

食品としてはもちろん、消臭や抗菌、ボディケア、ヘルスケアなど、人類は何千年もの間お酢を活用してきました。口に入れられる安全な物質で、環境に負荷をかけることなく、いろいろな場面で使えるお酢。みなさんは、どんな風に使っていらっしゃいますか?

※参考図書:『魔法の液体ビネガーお酢278の使い方』ヴィッキー・ランスキー著/クリーン・プラネット・プロジェクト編著訳/飛鳥新社

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食品

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