研究テーマ

朝ごはん、食べてますか?

いま放映中のNHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」は、主人公が亡き父に代わって二人の妹と母を守りながら奮闘する物語です。その中で人目を引いたのは、「あたりまえの暮らし」を大切にするため、父が遺した三つの家訓。その第一番目に「朝食は家族皆でとること」とあります。たしかに、朝ごはんは一日を左右するもの。一家にとって、その時間は、とても大切なものだったに違いありません。

現代人の朝食事情

時は流れて、現代の私たちの朝食事情はどうでしょう? 平成27年3月に厚生労働省が発表した「平成25年国民健康・栄養調査報告」によれば、その調査を実施した日(任意の1日)に朝食を欠食した成人は男性で14.4%・女性は9.8%に達していることがわかりました。特に「若者世代は朝食欠食率が高い傾向」にあり、20代の男性は30.0%、女性は25.4%。
「欠食」とは、「(貧困などのために)食事を抜く」意味の言葉ですが、この調査では「食事をしなかった場合」「錠剤などによる栄養素の補給、栄養ドリンクのみの場合」「菓子、果物、乳製品、嗜好飲料などの食品のみを食べた場合」の合計と規定していて、食糧事情によるものではないところに「時代」が映されているようです。

たかが朝食、されど朝食

朝ごはん抜きで学校や職場へ行ったら午前中ぼーっとして勉強や仕事に集中できなかった。そんな経験はありませんか? それは、身体がエネルギー切れの状態だったから。脳のエネルギー源となるブドウ糖は体内に大量貯蔵しておくことができないので、特に朝の脳はエネルギーが空っぽの状態。血液中のブドウ糖が不足し、いわゆる低血糖の状態に陥っているといいます。「血糖が低下したまま朝食を食べないと、体温も上がらず、集中力が低下し、だるさや眠さを強く感じる」ので、「脳に絶えずエネルギー源としてブドウ糖を補給するために、朝食を食べることが重要(公益社団法人 日本栄養士会)」。朝ごはんを食べるか食べないかで一日の生活リズムが大きく変化し、その後の活動に大きな影響を引き起こすというわけです。

子どもと朝ごはん

朝ごはんは、子どもたちの学力や運動能力にも影響を与えているといわれます。朝ごはんを「毎日食べている」「どちらかといえば食べている」「あまり食べていない」「全く食べていない」の4グループに分けて学力との関係を調べたところ、小学生も中学生も、明らかに差があったとか。たとえば小学6年生の国語A(知識に関する問題)では、毎日食べているグループの正答率が71.3%に対し、あまり食べていないグループは57.3%、まったく食べていないグループは53.2%(文部科学省『平成21年度全国学力・学習状況調査』)。基礎的運動能力についても、朝ごはんを毎日食べているかどうかで同様の差が出ているといいます。

朝ごはん抜きの原因は?

独立行政法人日本スポーツ振興センターの発表(平成17年度児童生徒の食生活等の実態調査 報告書)によると、朝ごはんを食べない小中学生の半数近くが「朝、食欲がない」と答えているそうです。その大きな要因としてあげられるのが、夜型の生活リズム。「早寝・早起き・朝ごはん」とは逆に、[夜ふかし→おなかがすく→夜食を食べる→翌朝は食欲がない…]といった悪循環に陥っているのです。これはもちろん子どもの世界に限ったことではなくて、大人社会の生活リズムを反映したもの。人間本来の体内リズムを取り戻すためにも、朝ごはんが必要といわれます。

ごはんで朝ごはん

そのために多くの専門家がすすめるのは、朝の米食です。ごはんは腹もちがよく、粒食なのでゆっくり消化・吸収され、長時間にわたってブドウ糖を脳に安定供給。また、しっかり噛むことで脳の血流がよくなり、仕事や学習効果のアップにもつながるといいます。
そして理想的とされるのは、そのごはんに魚や野菜、海藻、果物、肉、乳製品といろいろなものを栄養バランスよく組み合わせる日本型の食事。一見大変そうですが、卵かけご飯にみそ汁、納豆、海苔といったメニューなら、プレッシャーなしに作れそうな気もしますね。前日の夕食でみそ汁を多めに作っておくとか、前夜のおかずを少し取り分けておくのもいいでしょう。
それでも時間がないときは、あらかじめ冷凍しておいたおかずやお弁当用に小分けして売られている電子レンジメニューを活用する方法も。また食欲がないときは、レトルトのお粥やコーンスープのように、喉を通りやすく身体も温めてくれるものがいいそうです。

親の仕事や子どもの塾など、毎日の夕食を家族そろって食べるのは、そう簡単なことではありません。でも朝ごはんなら、ちょっと頑張って早起きすれば、家族そろって食卓を囲むこともできそう。朝ごはんを食べながら、昨日あった出来事や今日の予定を語り合う。そんな時間は、脳に送り込むブドウ糖以上に、家族の心に温かいエネルギーを注いでくれるでしょう。
8月もそろそろ終わり。9月からのスタートに向けて、朝ごはんを見直してみませんか?

研究テーマ
食品

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