研究テーマ

作り置きのススメ

「きょうの夕ごはん、何にする?」──親しい主婦同士の会話の中で、よく聞かれる言葉です。実際、献立を考えるところから始まって、買い物、料理と、毎日の食事の支度は主婦にとって結構な負担。ましてや働く主婦ともなると、仕事の終わった後にそれをするわけですから、ため息が出ることもあるでしょう。そんなお悩みを解決する手段として、注目を集めているのが「作り置き」。「つくおき」とも呼ばれ、ネット上でさまざまなレシピが紹介され、中には月間ページビューが100万を超える人気ブログもあるといいます。

作り置きの効用

作り置きは、時間的にも気分的にも少しゆとりのある週末に、翌週の平日分のおかずを作ってしまおう、というものです。材料をまとめ買いして一度に作るので、その都度料理するよりも効率がよく、時間・材料のロス、経済的ロスを減らせるのがメリット。また、外食に比べて栄養バランスをとりやすく、健康づくりにも役立つといいます。
そして実践している人が何よりも強調するのは、作り置きによって生まれる「心のゆとり」。忙しくても、疲れて帰っても、冷蔵庫を開けたらすぐに食べられるものがあるという安心感は、想像以上に大きいようです。

作り置きを楽しむ

その日の夕食を作るだけでも大変なのに、1週間分なんて…といった声も聞こえてきそうですね。実際、作り置きにはどの程度の時間がかかるのでしょう? 実践者の話をブログなどでみると、そのために費やす時間は、短い人で90分、長い人で3時間といったところ。この時間を短いと思うか長いと思うかは人それぞれでしょうが、平日の食事の支度から解放されることを思えば、妥当な数字なのかもしれません。
一方で、せっかくの休日ぐらい料理から解放されて、子どもと過ごす時間を大切にしたい、という人もあるでしょう。そんな人は、子どもと一緒に遊び感覚で作り置きを楽しむのも方法。大人だけで作るのに比べれば時間はかかるでしょうが、家庭の味はこんなところから自然に受け継がれていくような気もします。

作り置きメニュー

日本にはもともと、「常備菜」と呼ばれるおかずありました。きんぴらや佃煮、煮豆などがそれですが、いずれも、作った直後より時間がたってからのほうが味がなじんでおいしくなるもの。
こうした知恵は「作り置き」にも生かされていて、シチューやカレー、ロールキャベツ、煮込みハンバーグ、おでん、煮卵、おひたし、マリネなどが、おすすめメニューとしてよく取り上げられています。一方、作りたてがおいしいとされるオムレツやほうれん草のバター炒め、豚肉の生姜焼きなども、作り置きメニューに登場。温め直せば、おいしく食べられるといいます。ただし、日をおいて食べても味が濃くなり過ぎないよう、少し薄味に仕立てておくといった工夫は必要かもしれません。

下ごしらえも作り置き

とはいえ、週末に作り置きをする余裕すらないことだってあるでしょう。そんなときは、ちょっと頑張って「下ごしらえ」だけでもしておくのだとか。肉や魚を調味液に漬け込んだり、野菜なら刻んだり茹でたりといったところまでやっておくだけで、その後の平日がグンと楽になるといいます。
たしかに、タマネギの皮をむくことから始めるのと、薄くスライスしたものがあるのとでは大違い。そこまで用意してあれば、そのままオニオンスライスとして食べられるだけでなく、サラダのトッピングや肉・魚料理の付け合わせにも使えます。空気に触れた状態で時間を置くと、水にさらさなくても辛みや苦みがとんで食べやすくなるといいますから、まさに一石二鳥ですね。

買い置きと作り置き

毎日作る食事では、買い物に費やす時間もバカになりません。そんなときの強い味方は、買い置きできて常温保存できる乾物。作り置きレシピに乾物の登場回数が多いのは、買い物時間のロスをなくすという意味もありそうです。
それに何より、太陽と風にあてて水分を抜き、旨みと栄養分を凝縮した乾物は、私たちが手にする前の段階で下ごしらえが半分終わっているようなもの。その意味で、乾物は究極のインスタント食品ともいえるのです。特に切り干し大根やひじきなどの乾物は、水に戻すだけで火を使わなくても使える簡便さが人気。サラダなど、作り置きにプラスする一品としても活躍するでしょう。

「作り置き」ブームには、忙しい日常の中でも日々の食事を大切にしたいという思いが込められているようです。背景には、毎日が忙しすぎるという厳しい現実がありそうですが、だからこそ、同じやるなら楽しんでやりたいもの。休日を返上してノルマのようになってしまっては、何のための作り置きかわかりません。肩のチカラを抜いて、気楽に、まずは一品から始めてみませんか。

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食品

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