研究テーマ

わたしのスーパーフード

チアシード、ココナッツオイル、アサイー、スピルリナ、キヌア、ゴジベリー、亜麻仁オイル…「スーパーフード」と呼ばれ、巷でもてはやされている食品です。それにも流行があって、テレビや雑誌などで紹介されたものはアッという間に売り切れになり、お店の棚から消えてなくなることもしばしば。その名前から「特別感」は伝わってきますが、そもそもスーパーフードとは何でしょう?

スーパーフードとは

スーパーフードとは、簡単に言えば、栄養価や有効成分の含有量が高く、健康を維持していくために良いとされる食品のこと。アメリカやカナダでは、1980年代から、食事療法を研究する医師や専門家の間で使われていた言葉です。
提唱者によって推奨する食品は異なるようですが、一般社団法人「日本スーパーフード協会」では、「栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い」か「ある一部の栄養・健康成分が突出して多く含まれ」「一般的な食品とサプリメントの中間にくるような存在」で「料理の食材としての用途と健康食品としての用途をあわせもつ食品」と定義しています。

食の歴史とスーパーフード

海苔は日本のスーパーフードのひとつに挙げられる食品ですが、2010年、英国の科学雑誌『Nature』に興味深い研究論文が掲載されました。その内容は、「海藻を分解する消化酵素を持っているのは日本人だけ」というもの。フランスの研究機関が、アマノリ属の海藻に含まれる多糖類を分解する酵素を持つ海洋性バクテリアを発見し、それと同じ酵素を作る遺伝子を持つバクテリアが日本人の腸内にも棲んでいることがわかったのです。何世紀にもわたって海藻を生で食べつづけてきた日本の食の歴史に、身体が順応したのでしょうか。
この話は少し極端な例ですが、個々のスーパーフードにはそれぞれの「食の歴史」があり、そうした背景こそがスーパーフードと機能性食品や一般の健康食品とを画するものなのかもしれません。

日本のスーパーフード

スーパーフードというと、片仮名で表記された外国産の食品を想像しがちですが、日本には日本のスーパーフードがあります。
その代表選手は、発酵食品。小さじ1杯の糠味噌の中に約8~10億個もの生きた乳酸菌が活動し、整腸剤としての効能を期待できる糠漬け。飲む点滴ともいわれ、江戸時代には夏バテ対策の栄養ドリンクとして売られていた甘酒。大豆由来のイソフラボンや乳酸菌、酵母、不飽和脂肪酸、コリンなどの栄養成分をたっぷり含む味噌。腸内環境を整える善玉菌をもつ納豆、などなど。湿度の高い国土で稲作農耕民族として生きてきた日本人にとって、発酵食品は、もっとも身近で身体に合ったスーパーフードといえそうです。

ふだんのスーパーフード

日本の誇るスーパーフードは、発酵食品にとどまりません。先にご紹介した海苔は、日本人ならあたりまえ過ぎるような食品ですが、実はタンパク質が豊富でビタミンCがレモンの2倍、食物繊維はゴボウの約7倍といわれるスーパーぶり。ヒジキ、昆布、わかめなど、その他の海藻類も、ミネラル分が豊富なことで知られます。他にも、低カロリーでミネラルや食物繊維の豊富なおから、カテキンが脂肪を燃焼させるという緑茶、酸性に傾いた体のバランスを整える梅干しなどなど。私たちが日常的に親しんでいる食材が、実はスーパーフードだということに気づきます。

旬の食べものはスーパーフード

「りんごが赤くなると医者が青くなる」「蜜柑が黄色くなると医者が青くなる」「トマトが赤くなると医者は青くなる」「大根どきの医者いらず」…旬の食べものの力をあらわすことわざです。旬とは、それぞれの生育にもっとも適した時期。自然の摂理に沿って無理なく育った野菜や果物は、当然その栄養価にも差が出てきます。
1950年(昭和25年)に発表された『日本食品標準成分表』は、食品に含まれる栄養成分の基礎的データ集ですが、改訂を重ねるにつれて野菜などの栄養素の含有量が減っているといわれます。例えばホウレン草のビタミンC含有量は、1963年(昭和38年)に100mg/100gだったものが、2000年(平成12年)には35mg/100gまで減少。ただ、夏季と冬季で含有量が別書きされている第五訂以降を見ると、冬(旬)のホウレン草のビタミンC含有量はそう極端には減っていないようですから、旬の食べものの力強さがわかりますね。

寒い冬場に身体を冷やす働きのある夏野菜のキュウリを食べながら、遠い国から運んできたスーパーフードで栄養素を補おうとしている私たち現代人。どこか自然のリズムとずれていると感じるのは、考え過ぎでしょうか。「幸せの青い鳥」のように、目を凝らせば、スーパーフードは自分の身近なところにあるのかもしれません。
みなさんにとって、スーパーフードとは何ですか?

研究テーマ
食品

このテーマのコラム