野菜畑に添える花たち
「コンパニオンプランツ」という言葉を聞いたことがありますか?
「共栄作物」とも呼ばれ、文字通り、コンパニオン(仲間・連れ)となるプランツ(植物)。2種類以上の植物を近距離に植えて栽培すると、生育が良くなったり病虫害が減ったりなどの効果が現れることがあり、そのような共存共栄関係にある植物同士のことを言います。
なんだか目新しい考え方のように思えますが、私たちが見慣れた風景の中にも、それらしきものを探すことができます。たとえば、田んぼのあぜ道や畑の近くでよく見かける彼岸花には、野ネズミやモグラを遠ざける効果があるとか。また、ホオズキ、ドクダミ、クローバー、カラスノエンドウなどには害虫を遠ざける効果があるそうです。そういえば、これらの植物は「農作物の敵」として引き抜かれることも少なく、遠い昔からごく自然に、田んぼや畑の近くで共生していたような。コンパニオンプランツという言葉は知らなくても、昔の人は経験上、植物同士の不思議な関係性に気づいていたのかもしれません。
こうした関係は、病虫害を減らすだけでなく、野菜そのものの風味を増す効果もあるとか。ここでは、ハーブを主体に、具体的な例をいくつかご紹介します。
- カモミール
- 植物の医者ともいわれ、弱った植物を元気にしてくれます。アブ、ハチなど、受粉に有益な昆虫を呼んでくれます。
- ガーリック
- 強い香りが病原菌を殺菌し、アブラムシの防除にも効果があります。ただし、豆科の野菜やイチゴ類とは相性が悪いようです。
- コリアンダー
- アブラムシ、コナガの防除に効果があります。
- セージ
- アブラナ科の植物にモンシロチョウが卵を産みつけるのを防ぎ、風味を良くします。ただし、キュウリとは相性が悪いようです。
- タイム
- モンシロチョウの天敵であるハチを呼び寄せて、卵を産みつけるのを防ぎます。
- ネギ類
- バラやバラ科の果樹から、ゾウリムシ、モグラを遠ざけます。野菜につくアブラムシにも効果があります。
- バジル
- トマトを害虫から守り、生育を促し風味を良くします。コナジラミ、ハエ、蚊、アブラムシなどにも効果があります。
- パセリ
- トマト、アスパラガス、人参などの生育を助け、風味も良くします。
いかがですか? 自然の仕組みは絶妙なバランスで成り立っていて、それぞれの植物が大事な役割を担っていることに気づかされます。農薬も化学肥料もなかった時代、昔の人はこうした知恵をうまく活用しながら野菜を育ててきたのでしょう。
この春、野菜づくりを計画されている方は、野菜のそばにコンパニオンプランツを添えてみませんか。
とはいうものの、コンパニオンプランツには農薬のような即効性はなく、根気よく続けて穏やかな効果が現れてくるのを待つ、気長な方法です。効果だけを期待すると、がっかりするかもしれません。花の美しさを愛でたり、香りを楽しんだり、料理に使えるものは味わって楽しむなど、遊び心を持ってやってみるのがよさそうです。