研究テーマ

収納家具について

収納家具が日本で使われるようになったのは、江戸時代のこと。それまでは木の箱などに入れていましたが、引き出しや扉が付いた、いわゆる「箪笥」の形になったのは、そんなに古いことではありません。初期の箪笥は手間とお金をかけてつくられ、とても庶民の手に届くものではなかったようです。
火災の多かった江戸では、そのまま持ち運びできるように、車輪の付いた「車箪笥」と呼ばれるものもありました。そう言えば、「火事場の馬鹿力」で運び出すものの代表は箪笥。箪笥の中身はもちろんですが、箪笥自体も貴重品だったということでしょう。
箪笥が広く普及するのは、明治になってからのことです。茶の間に茶箪笥という光景は、日本人の暮らしの原風景として、みなさんの中にもあるかもしれません。

一方、住宅の近代化は、家具を建築の中へ組み込んでいきます。洋服箪笥はクローゼットに、茶箪笥はキッチンのカップボードに。効率のよい収納を求めて、家具は限りなく建築と一体化していきました。
しかし、ものの量は常に予想したスペースを上回るものです。日本は豊かになり、ものの量は増大し続けています。新築で完成した時点ではすっきりしていても、はみ出したものを収納するために、チェストやシステム収納などを買い足して使っている方も多いことでしょう。

暮らしは、常に変化するものです。そういう視点で見ると、建築に組み込んだ家具は将来の家族の変化や暮らし方の変化には不向き、という考え方もあります。建築時に決めた動線計画は、あくまでも現時点での暮らしを想定したもので、いつかは変わる時が来るからです。それならもう一度、かつての住宅のように建築と家具を切り離し、変わるものと変わらないものを分けて考えるのもいいかもしれません。
まずは変わらない建築の箱をつくり、そこに必要な家具を入れていく。そして家族の成長に合わせて、間取りを変更していく。そんな考え方もありそうです。

「スクラップ&ビルド」と呼ばれ、20年も満たずに建て変えるのがあたりまえとされていた日本の住宅観は、終わろうとしています。いま建築の考え方は、「100年は持つ住宅」へと変わってきています。100年前に現代の暮らしの予想がつかなかったように、100年後のことも簡単には想像できませんが、可変性を考慮した住宅づくりは必要といえるでしょう。

そしてその可変性は、収納家具をどう考えるかによって決まるとも言えそうです。これからの住宅は、家具を建築と一体化していく考え方から、もう一歩進んだ解決方法を模索していくように思います。

みなさんは、収納家具についてどのようにお考えですか?
ご意見をお待ちしています。

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