新年を迎える掃除
師走に入りました。多くの寺社では、12月半ばになると、仏像や堂内のほこりを払う「煤払い」が恒例の行事になっています。家庭でも、普段は手が回らないところをきれいにして、清々しい気分で新しい年を迎えたいもの。今回は、暮れの大掃除について考えてみましょう。
神事から始まった大掃除
大掃除のもとは、今でも寺社で行われている「煤払い」。新しい年をつかさどる歳神様を迎えるために、1年分の汚れを落とす神事です。煤払いはお正月準備の事始めで、この日には掃除のほかに、正月飾り用の松を山から切ってくる「松迎え」なども行います。日にちや風習は地方によってそれぞれですが、江戸幕府が12月13日に行っていたため、それにならって江戸の町家でも13日にするようになったとか。煤払いの習慣がなくなった今でも、神棚や仏壇の掃除だけはこの日に行う、という家庭もあるようです。
暮れの大掃除の意味
40~50年前まで、年末の大掃除は家族総出で行うのが一般的でした。しかし、大人もこどもも忙しくなった現代、そうもいかないという声が聞こえてきそうです。年末年始は帰省や旅行で留守にする方も多いでしょうし、「ふだんからこまめに掃除しておけば、年末に特にする必要はない」という意見もあります。
とはいえ、暮れの大掃除は、その由来が示すように、新しい年を清々しい気持ちで迎えるためのもの。ほかの季節にする大掃除とは異なる意味合いを持つと言ってよいでしょう。どんなに忙しくても、神棚と仏壇だけはきれいにするとか、神棚や仏壇がない家でも玄関とトイレだけはするといったように、「清める」という意識を持ってやってもよさそうです。
早めに始めて、少しずつ
暮れも押し迫ってあわてないためには、早めに計画を立てて、少しずつきれいにしていくのがよいかもしれません。
ちょっと手の届きにくい戸棚や、天井の照明、食器棚の中など、知らずしらずにホコリがたまったようなところは、固く絞った雑巾で拭くだけでもさっぱりします。面倒なブラインドなどには、軍手が活躍するでしょう。一方、ふだんできないガスレンジまわりなど、時間が経ってべとついてしまった汚れもあります。お風呂の鏡やドアにいつの間にかついてしまった白いシミなども、気になるところではないでしょうか。洗剤選びも、ポイントになりそうです。
洗剤のこと
環境にやさしい暮らし方への関心が高まっています。そんな時代を反映して、重曹やクエン酸、石けんを使ったナチュラルクリーニングが雑誌記事で紹介されることも増えてきました。
一方で、「ナチュラルクリーニングは面倒」「汚れがあまり落ちない」と感じている方もまだたくさんあります。面倒なことは長続きしにくいものですが、仕組みがわかれば「意外と簡単で、予想以上に汚れ落ちもよい」というのが使っている人の実感。
上手に使いこなすにはちょっとしたコツがあって、重曹やクエン酸などを吹きかけたり塗りつけたりしたあと、少しだけ時間を置くことで、楽に汚れを落とせるようです。また、続けるコツは、「すべてがそれでなければ」と力まないこと。頑固な汚れは、専用の洗浄剤を使った方がいい場合もあります。自分でできそうなことから、少しずつやっていけたらいいのではないでしょうか。
大掃除をしながら、家庭排水が流れて行く先の川や海にも、少し思いを寄せることができたら──新年を迎えるにふさわしい、清々しい大掃除になりそうです。
私たちもできるところからナチュラルクリーニングを実践し、台所、お風呂、トイレの基本のお掃除について、レシピをつくってみました。ダウンロードして印刷していただけます。場所別に切り離して貼っておくのもいいかもしれません。年末のお掃除にお役にたてたら幸いです。
みなさんからのご意見、お掃除体験談などを、お待ちしています。