お正月の緑
クリスマスが終わると、家々や街では新年を迎えるための飾りつけが始まります。お正月飾りの代表といえば、松と竹を組み合わせた門松。今回は、門松を中心に、お正月の緑について考えてみましょう。
門松の意味
松は長寿の木であり、冬の間もつやつやとした緑を失わない常緑樹。その葉は棘のように鋭く、半端な物を寄せ付けない感じを与えます。強い生命力と風雪に耐える神々しい姿から、神に奉る(まつる)「祭り木」と呼ばれ、やがて歳神様を「まつ」木へ。「まつり」は神の来訪を「待つ」ためのもので、そこで神にさしあげる木というところから「まつ」の名前となったようです。
竹の「たけ」は、「猛々(たけだけ)しい」と同根。冬でも青々としていること、真っ直ぐに伸びること、さらにその成長の早さや次々と生えるたくましさを、猛々しいと感じたのでしょうか。
神を迎える門松
神様が降りてくる場所を「依代(よりしろ)」と言いますが、門松は、新しい年の歳神様をお迎えする依代として置かれるものです。
松は歳神様を「まつ」意味ですが、ここでもうひとつ注目したいのは、空洞の竹の意味。
地鎮祭などで四隅に杭を立て縄を張って囲むように、日本の神事では、神様をお迎えする時に何もないからっぽの空間をつくります。「空」の中に、神が入ると信じられているのです。空洞の竹は、神を迎えるにふさわしい植物で、天上から降りてきたかぐや姫が竹の中にいたのも、きっと同じ意味があるのでしょう。
依代の意味
お正月に限らず、日本の行事には、こうした「依代」が必ずと言っていいほど用意されます。七夕飾りや、お月見のすすきなどはお馴染みですね。
依代(よりしろ)の「代(しろ)」は、糊代(のりしろ)、縫い代(ぬいしろ)などと同じように、空間や余地を表す言葉。語源的には色の「白」であり「素」でもあり、「余白」とか「余地」を残していくという日本人の文化や美意識にも通じています。
神事の時に神主さんの持つ御幣(ぬさ)の白は、晒(さら)された聖なる色でもあり、音とともに、なにかを振り出すと同時に、そこにケガレを吸い付けるためのものでもあるようです。
赤い実の緑
お正月の縁起物として活ける千両、万両、南天などは、いずれも、常緑の葉を持ち、赤い実がつく庭木です。赤は太陽や火をあらわし、寒い冬にはその力にあやかりたいものですし、よく知られているように赤には魔除けの意味も。このように、お正月に飾る緑には、それぞれ意味があり、願いが込められているのです。
さまざまなところに緑をあしらいながら、新しい歳神様をお迎えするための場所を、心をこめて用意する──古くからの日本のしきたりには、目に見えないものに対する畏敬の念や願いがこめられています。
今年は、そんなことにも思いを寄せながら、お正月のしつらえを考えてみてはいかがでしょう? お正月飾りが、今まで以上に大切なものに感じられるかもしれません。
みなさんのお宅では、お正月にどんな緑を飾っていらっしゃいますか? ご意見をお待ちしています。