どんど焼き
三が日が過ぎ、松の内が終わると、お正月気分もおしまい。門松や注連縄(しめなわ)なども取り外し、日常の生活が戻ってきます。みなさんは、お役目の終わったお正月飾りを、どうしていらっしゃいますか? 小正月の1月15日に行われる「どんど焼き」は、これらのものを燃やす火祭り。お正月にお迎えした歳神さまをお送りする、日本の伝統的な行事です。
どんど焼きとは
お正月に飾った門松や注連飾り(しめかざり)、書き初めなどを家々から持ち寄り一箇所に積み上げて燃やし、五穀豊穣、無病息災、家内安全を願う火祭り行事です。門松や注連飾りによって出迎えた歳神さまを、それらを燃やす炎とともに見送るという「送り火」の性格を持つもの。
各地にさまざまな方法がありますが、田んぼや空き地に青竹や藁(わら)、杉、檜などで櫓(やぐら)を組んで正月飾りなどを燃やし、その残り火で餅や団子を焼いて食べるのが一般的なスタイルです。火は穢れを清め、新しい命を生み出すもの。どんど焼きの火にあたると若返るとか、焼いた餅や団子を食べると1年を健康に過ごせると言われ、書き初めを燃やしたときにその紙が高く舞い上がると字が上達するという言い伝えもあります。
都市部のどんど焼き
新しい年の幸せを祈願して飾った正月飾りだから、ゴミとして扱うのではなく、形のない灰に帰す──どんど焼きは、先人たちのゆかしい心が偲ばれる行事です。しかし、火を使う、広い場所が必要など、現実的にはむずかしい面もあり、江戸では火災予防を理由に17世紀半ばに禁止されました。どんど焼きのできなくなった江戸では、お正月飾りを専門の業者が高い料金で回収したとか、庶民が川やお堀に投げ込んで問題になったという記録も。現代の環境問題を彷彿させると同時に、お正月飾りに込められた江戸っ子たちの特別な想いも感じられる話ですね。
現代のどんど焼き
都会では自宅の庭で焚き火をするのもはばかられる現代、どんど焼きの行事は廃れつつあるようです。その一方で、地域の伝統行事を見直そうという機運が高まって、町の自治体やPTAの行事として復活するところも。また、地域振興のためのイベントとなっているところもあり、長野県野沢温泉村の「道祖神火祭り」は国の重要無形民俗文化財に、神奈川県大磯町の「左義長(さぎちょう)」も国の無形民俗文化財(「道祖神火祭り」も「左義長」も、「どんど焼き」と同じ意味)に指定され、多くの観光客を集めているといいます。
お正月飾りの行く末
「どんど焼き」という言葉そのものを知らない人も増えてきた中で、お役目の終わったお正月飾りは、どんなふうに処分されているのでしょうか? 新年への願いや祈りを込めて飾ったものを他のゴミと一緒に捨てることには、なんとなく抵抗を感じる方も多いでしょう。
今年のお正月飾りは、片付ける時に少しだけ気を配ってみませんか。
地域の中でどんど焼きをしているところを探してみるとか、お札やお守りのお焚きあげをしている神社に問い合わせてみるのもいいでしょう。「場」がなければ、いっそのこと、有志をつのって自分たちの手でどんど焼きを復活させるのもいいかもしれません。幸いにも燃やす場所を見つけることができたなら、ダイオキシンが発生する塩化ビニールやプラスチック類を取り除くなど、環境への配慮も考えたいところ。また燃やす場所が見つからない場合も、ゴミとして無意識に捨てるのではなく、新年への願いを思い起こしながら処分することで、少しは意味合いが変わってきそうですね。
みなさんのお住まいの地域では、「どんど焼き」の習慣はありますか? みなさんは、お正月飾りをどんなふうに片付けていらっしゃいますか?
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