研究テーマ

低炭素化社会という未来 ─資源を使わない暮らし方─

「地球温暖化対策基本法」というものをご存知でしょうか。地球の温暖化防止を目標に、温室効果ガスができる限り排出されない社会をめざすもので、昨年の10月に閣議決定された法案です。 その具体的数値目標として、1990年のCO2排出量を基準に、2020年までに25%、2050年までに80%を削減し、同時に2020年までの一次再生エネルギーの割合を10%にするとしています。
この数字をみただけではイメージしにくいのですが、排出量を軽減する方法として2つの視点が考えられます。ひとつは、絶対量としてのエネルギー需要を下げること。そしてもうひとつは、エネルギーの質を自然エネルギーなどに転換していくこと。後者では、太陽光発電や風力発電、天然ガスを利用した水素燃料を使う発電方式など、さまざまな方法が進んでいます。技術の改善はさらに進み効率のよい自然エネルギーの供給がされるようにはなるでしょうが、大事なポイントはエネルギー需要の絶対量を下げること。絶対量が下がれば下がるほど、化石燃料の比率は下がって、質の良いエネルギーの使われる割合が多くなり、CO2削減効果が大きくなるからです。
簡単に言えば、最も効果的な方法は、「エネルギーを使わない」ということ。例えば、移動にはなるべく車を使わずに効率のよい公共の移動手段を使うとか、室内の空調をなるべく使わないように工夫するとか、ものを運ぶときもできるだけ効率のよい方法で無駄をなくすとか、そんな工夫が必要とされているのです。

個人の力でできることもたくさんありますが、企業のレベルや都市・町といった行政のレベルで考えなければならないこともたくさんあります。車を使わなくても移動できるような都市交通の仕組みや、エネルギーの供給システムといった課題もあるでしょう。一方、各家庭では、風通しのよい家づくりや、太陽の熱が蓄積されやすく同時に家の中の熱が外に逃げにくいような熱効率のいい家づくり、涼しく過ごすために風通しを考えた家づくり、太陽の日射角度などを考えた家づくりなどが必要になります。
また、「家やオフィスの床面積を小さくする」のも効果的な方法だと言われています。建築の内部の面積を小さくして、その分、外部の面積や外部に近い環境の面積を大きくすることで、エネルギー消費を抑えようという発想です。家の周りに緑を配置したり、窓際に緑のシェード(緑のカーテン)を置いてみたり、また玄関先に打ち水をしたりという、昔ながらの知恵を活かした暮らし方も大切でしょう。

時代は大きく変わろうとしています。エネルギーの課題を、身近なところから考えていく時代に突入しました。いままでなにげなく考えてきたエネルギーに対する考え方を大きく転換し、それに合わせて、私たちの暮らし方そのものを大きく変える時期に来ているのです。
それは、なるべく自然の仕組みに近い状態で暮らすこと。太陽や自然のエネルギーをうまく活用し、雨水なども利用しながら、資源の無駄使いを止めていくこと。すでにある資源を再利用できるような仕組みを積極的に利用したり、資源を再生してエネルギーに代えていくなどの工夫も必要になってくるでしょう。
CO2という見えないものが測定され、その削減効果が目に見えるような工夫もなされていくことになるでしょう。そして、大量消費型の社会から、消費を抑えて、ものを永く使う時代へ。ものの持ち方も変わるかもしれません。

来るべく低炭素化社会。この社会への移行のためには、私たち自身の意識の変革が必要となってきています。頭でわかっていてもなかなかできないのが人間ですが、時代はすでに「待ったなし」の状態。新たな社会をめざしてこの変化を受け容れ、逆にこれを絶好の機会ととらえて、新しい時代の価値観に適合した暮らし方を早く身に付けていきたいものです。

まずは意識の変革から。
低炭素化社会の到来を、みなさんはどのように考えていらっしゃいますか?

研究テーマ
生活雑貨

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