コミュニティーを考える ─ファシリテーターという役割─
「ファシリテーター」という言葉をご存知ですか? ファシリテート(facilitate=容易にする、促進する、手助けをする)という英語から来た言葉で、会議の場で合意を形成していく進行役のこと。そんな存在が、いま、コミュニティーの場で注目され、必要とされています。
あるマンションでは、管理人とは別に、このファシリテーターを置いているそうです。ファシリテーターは、コミュニティーを活性化するために、さまざまなイベントをこまめに企画していきます。みんなでお茶を飲んだり、食事会をしたり、中古品を展示して「蚤の市」をしたり、古本をみんなで持ち寄って交換したり、読書会をしたり、故郷から名産品を取り寄せて物産展をしたり......そのアイデアは豊富です。イベントの企画だけでなく、そのイベントに向けて、住人と一緒にテーブルやイスをつくったり、料理をつくったりもします。音楽チームを招待したり、中には住人でバンドを結成したりと、イベントは盛り上がるそうです。
ここで大切なことは、ただ楽しむというだけではなく、「共同で」できる作業を見つけること。庭先の花の手入れをしたり、屋上の掃除をしたり、大掃除をしたり......自分たちでできることはみんなでするように、声をかけていくのだとか。それは、かつての町内会の活動にも似ています。このことによって、それぞれが負担する管理費も安くすることができるそうです。
コミュニティーを活性化していこうとするこうした気運には、社会的な背景があると言ってよいでしょう。人口の減少、高齢化、ひとり暮らしや結婚しない人たちの増加。日本の都市の構造は、いま、大きく変わろうとしています。地方の小さな村の過疎化が問題になっていますが、同じように、大都市の人口バランスも高齢化しているのです。シルバーシートは、車両の片隅だけではすまなくなるでしょう。それに加えて、経済成長もピークを過ぎています。かつてのように若者が高齢者を支えることも、高齢者が施設に入って隔離されて暮らすようなことも、現実的ではなくなりつつある時代です。すべての人が、生涯現役で何かをしつづけるような社会になるでしょう。それは、社会と常に接点をもち、コミュニティーの一員でありつづけることを意味します。そして弱い人を隔離するのではなく、コミュニティー全体で支え合っていく。そのためにも、コミュニティーが必要となるのです。
コミュニティーが潤滑に回るかどうかは、「人」次第。そこで重要になってくるのが、ファシリテーターの存在です。町会長さんのようなリーダーではなく、「火付け役」であり「世話人」であり「盛上げ役」。みんなが参加しやすいように環境を整え、みんなに楽しんでもらうために動く人です。
近所付き合いにはたしかに面倒なこともあり、そんな「しがらみ」を嫌って都会にやってきた人たちもいるでしょう。しかし、近隣との付き合いなくしては、暮らしが寂しくなるのも事実です。まして、だんだん年をとっていくと、コミュニティーの中での人間関係が大切になっていきます。できるだけ自立して生きようとする高齢者を支えるのは、活性化したコミュニティー。そのためにも、こうしたファシリテーターの役割をする人たちが、もっと増えていく必要があるでしょう。
隣に住む人がどんな人か、知っていますか?
あなたの所属するコミュニティーは、どんなコミュニティーですか?
そこで楽しんでいますか?
そこには、ファシリテーターに近いような方がいますか?
みなさんのご意見をお聞かせください。