研究テーマ

これからの暮らしを考える

東北地方太平洋沖地震で被害を受けられたみなさまに、心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧復興を願うばかりですが、その痛手と今後の努力の大きさを思うと言葉もありません。今回のことを、同じ国に暮らす私たち全員のこととして受け止め、この先できることをひとつずつ考え、実行していきたいと思います。

節電・節約に取り組む

照明を落とした廊下や公共スペース、薄暗い中で営業し営業時間も繰り上げて早めに閉店する店、エスカレーターの一部を止めている駅......いま、日本人のすべてが節電に取り組んでいます。電車が間引き運転になったことで、自転車に乗る人や歩く人も増えています。夕方も早く家路に着き、無駄に電気を使わないように努力しています。こうした環境は、なるべくエネルギーを使わなくてすむ家の構造や蓄電の仕組み、自然エネルギーで自家発電できる仕組みなどに人々の目を向けさせることでしょう。エネルギーと暮らしについて、誰もが真剣にならざるを得ない時代が来たと言えます。
一方で、平常心を失った買占めも各地で起こり、それによって、必要なところに物資が行き渡らない状況も生まれています。資源の再配分と適正配分という、社会全体で考えるべき問題も顕在化していると言ってよいでしょう。
今回の大震災で、私たちは大切なことに気付かされました。それは、誰もが心の中で感じていたこと。人口の減少や高齢化、化石燃料の限界、地球温暖化など、山積する課題を解決するには、これまでの経済成長時代のやり方では続かないだろうということです。そのことが現実となったいま、私たちは新しい勉強をし始めているのではないでしょうか。

経験を踏まえた新しい生活

今回のような災害は、日本であればどこでも起こり得るということを、私たちはよく知っています。被災地の被害を見聞きし、「何かできないか」というやり場のない思いの中で、災害に強い街とは何か? 持続可能な街とは何か? コミュニティーとは何か? 行政とは何か? 社会インフラとは何か? などなどの根本的なことが、もっと語られていくでしょう。
すべてが飽和状態の日本の社会で、余ってくるものもたくさんあるはずです。
「奪いあえば足りない、分け合えば余る」というガンジーの言葉がありますが、まさにこれからは、分かち合い共存していく時代。ハード面だけでなく、コミュニティーを守ろうとする人々の意識も、災害に強い街づくりにつながるはずです。また、純粋な思いに突き動かされて支援活動をするボランティアの人たちの姿も、強いメッセージとなって私たちの心を揺さぶり、社会の価値観を変えるきっかけになるでしょう。

一次復興、二次復興

今回の震災によって避難所生活を余儀なくされている方は現在でも20万人を超え、必要とされる住戸は15万戸とも言われています。その受け入れのための整備が、全国各地で進んでいます。課題はたくさんありますが、まずは安心して住める場所を確保すること。受け入れのためには、国や自治体、民間企業、そして一般の市民も協同する必要がありそうです。日本にはアパートなどの空室が400万戸もあると言われています。こうした空いている部屋が被災者用に活用されればとも思います。
一方、インフラもろとも広範囲に破壊されてしまった街の復興は、長い時間がかかります。そうした状況の中では、住み慣れた土地を離れて新しい土地に移り住むという選択もあり得るでしょう。もちろん、自分や家族の歴史を刻んできた土地を離れるのは簡単なことではありません。どこに住むのか、どこでどうやって働くのか。重い決断となることは、まちがいありません。被災された方々の新しい生活のために、一次避難、二次避難から一次復興、二次復興に向かって、社会全体での大きな支援が急がれます。地震国である日本は、過去にもさまざまな災害に見舞われてきましたが、その都度力強く復興してきた歴史があります。

働き方も変わる

災害を機に、家族や生活を考えて、住む場所を変える人もあるかもしれません。大都市から離れて地方での暮らしを考える人、通勤時間や通勤経路を考える人、住居と職場の関連を考える人などなど。経験をもとに、新しい生活の価値を再認識し、再構築していこうという人も出てくるでしょう。

「くらしの良品研究所」では、震災の後の「これからの日本の暮らし方」について、みなさんと一緒に継続的に考えていきたいと思います。震災後の暮らしに関する課題や取り組んでいる事例など、みなさんの周りで起きていることを、ぜひ教えてください。

研究テーマ
生活雑貨

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