自転車を楽しむ
今回の大震災を機に、多くの人がエネルギーの節約を心がけるようになりました。自転車で通勤する人が急増しているのも、そんな意識のあらわれでしょう。
それ以前からも、自転車ファンはこの数年で増えていました。マニア向けの自転車専門店も増えていますし、中には数十万円もするような自転車もあったりします。上から下までレーシングウェアに身を包んで颯爽と走る「自転車乗り」を、街の中で見かけることも多くなりました。渋滞などを考えると、大都市では自転車の方がかえって早いかもしれません。書類を届けるために都内を自転車で走るメッセンジャーは大活躍です。彼らの走るスピードは時としてバイク便よりも速いといい、一日100km近くも走るその体は、鍛え上げられてまぶしいほどです。
自転車の魅力
家々の庭に咲く花、季節を映して変化する街路樹、次々と変わるビルの合間の景色、食べもの屋さんのにおい、新しくオープンしたお店......自転車で走ってみると、いろいろなことを発見できます。それはきっと、歩く人と同じ目線で動くから。そして、気になることがあればいつでも立ち止まって見ることができるし、細い路地にも入っていける。「自転車は発見の足」と言われるのも、こうした理由からでしょう。
また、自転車は平坦なところだけでなく、坂道も楽しい乗り物です。もちろん「上り」は大変ですが、その後の「下り」の爽快感は、自転車に乗ったことのある人なら誰もが体験済み。風を切りながら自転車と体がひとつになって一気に走るその感覚を、「空を飛ぶような」と表現する人もいます。
自転車はまさに、自然に身をさらし、五感をフル稼働させて乗る道具。それは、現代人が失いかけている生き物としての本能を目覚めさせてくれるかもしれません。
通勤の足として
計画停電への対応も考えれば、自転車で通勤する人は、今後さらに増えていくでしょう。いたずらに体力を消耗させる満員電車での通勤に比べて、自転車なら自分のペースで走ることができるし、なにより健康的。ひと汗かいてからの仕事は、頭もすっきりして効率が良さそうです。
とはいえ、一方には自転車通勤を躊躇させる現実もあります。遠く離れた駐輪場から会社まで歩くことの時間的なロス、夏場に汗だくになった体をどうするか、などなど。となると、企業や社会の環境も変えていく必要があるでしょう。多くの人の意識が変われば、そのうち、駐輪場やシャワールームを完備する企業も出てくるかもしれません。
公共機関も、もっと気軽に自転車が使えるような工夫があっていいでしょう。アメリカやヨーロッパのように、バスの前に自転車を置けるラックがあったり、地下鉄の中にもそのまま持ち込むことができたり。そんな環境が整えば、自転車の行動範囲はさらに広がっていくはずです。
自転車生活は、エネルギーを使わない暮らし。私たちの体力や脚力が、そのまま、エンジンです。いきなり自転車通勤は無理にしても、まずは、自転車で街を走ってみませんか。
これまで車で走っていたときには気づかなかったことや思わぬシーンが、目の前にあらわれるかもしれません。そして、それが社会全体のエネルギー節約にもつながっていけば、素敵なことだと思います。
※上記の写真はお客様のご意見より、差替えさせていただきました