研究テーマ

高温多湿の中で ―住まいの湿気―

梅雨まっただなかの6月は、湿気の多い時季。湿度が80%以上になる日も珍しくありません。雨が降ると風も止まり、家の中の空気も淀んでしまいがち。今回は、住まいの湿気について考えてみましょう。

湿度のコントロールは難しい

一般に言う湿度とは、「相対湿度」とも呼ばれ、その大気がその温度で含み得る最大限の水分量(飽和水蒸気量)に対する割合のこと。同じ水分量でも、気温が上がれば飽和水蒸気量も上がるので、湿度は低くなります。一方「絶対湿度」は、気温に関係なくその空気中に含まれる水分量のこと。いずれにせよ、空気は同じ水分量、同じ湿度になろうとする性質がありますから、部屋の中だけ水分の質量を少なくしようとしても難しいのです。エネルギー消費を抑えるという意味では残念なことですが、湿気対策に関しては、いまのところ機械に頼ったほうが効果的と言えるでしょう。除湿器はクーラーに比べて消費電力が低いのが、せめてもの救いです。

除湿器を使う

除湿器には、2つのタイプがあります。
ひとつは、気温を下げて結露させ、その水分を抜き取るコンプレッサー式。「空気を冷やして結露させ除湿する」という仕組みですから、暑い夏向きで、もともと気温が低い冬場などにはあまり性能を発揮しません。また、このタイプで本体を部屋の中に置くものは、少し注意が必要。直接の吹き出し口からは涼しい空気が出てきますが、反対側からは放熱板を通して暖かい空気が出てくるので、クーラー代わりにはならないということです。窓付けで排気口が外気に面しているものは、この課題を解決していると言えるでしょう。
もうひとつはゼオライト式(デシカント式とも)。多孔質で吸湿性のあるゼオライトという鉱物の粒(軽石の砂利のようなもの)に空気中の水蒸気を吸着させ、それを熱で乾燥させる仕組みです。こちらは、寒い冬でも除湿能力が衰えないので、冬の湿気をとるのに適しています。
さて、こうした除湿器を使うことで部屋の湿気を抜いたら、さらに扇風機などで乾いた空気を循環させると効果的。空気が動くことで、肌から気化熱を奪い、気温を低く感じさせてくれますので、体感できる快適さは格段に増してくるでしょう。

調湿機能のある素材を使う

節電が求められる今年は、なるべくエネルギーを使わずに湿気を減らしたいもの。除湿器などに加えて、調湿機能のある壁や和紙、畳といった自然系の建築素材を活用していくのもよいでしょう。部屋全体の湿度を下げるまでには至りませんが、その周辺の湿度を下げる効果は期待できますし、同時に、素材のさらりとした肌触りなどが、快適さをつくりだしてくれます。

温度や風をコントロールする

私たちが湿気を感じるときは、湿度だけを取り出して感じるのではなく、気温や風との関連の中で感じ取ります。快適さを決めるのは、「温度・湿度・風」の3つの要素。湿度のコントロールだけでなく、温度や風をコントロールすることもあわせて考えるとよいでしょう。
理想を言えば、建築の時点から湿気対策を考え、床下や壁の中などに吸湿素材を組み込んで乾いた空気を部屋に送り込めれば効果的ですが、大がかりで、誰にでもできることではありません。

湿気のコントロールは、ひとつの方法だけで一気に解決するのは難しいもの。小さな工夫によって生まれたほんの少しの変化が積み重なって、快適さにつながっていくはずです。そんな視点から、もう一度、家の湿気対策を考えてみてはいかがでしょう。

今年は、多くの地域で例年より早く梅雨入りして、湿度の高い日が続いています。みなさんの家では、どんな湿気対策をなさっていますか? ご意見、ご感想をお寄せください。

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