半自給のくらし ―エネルギーの自給―
地域で生産された農水産物や資源などをその地域で消費することを「地産地消」と呼びますが、エネルギーについても、同じような考え方が広まっています。そのメリットはなんと言っても輸送コストがなくなること。特に電気は運んでくる時にかなりの量が途中でなくなってしまいますし、災害や事故などの時も地域内でエネルギーを自給することができれば安心です。
一局集中のエネルギーから分散型のエネルギーへ
私たちがエネルギー源としている化石燃料は有限なもので、いつかは必ずなくなります。これまでも何度となくその限界が言われてきましたが、そのたびに採掘技術の進歩や新たな場所を発見することで、当座をしのいできました。とはいえ、その危機が必ずやって来ることに変わりはなく、時代はどうしても新たなエネルギーをつくり出していかなければなりません。風力や太陽光、地熱利用など、自然エネルギーを活用せざるを得ない状況なのです。
さらに言えば、自然エネルギーにシフトするだけでなく、その消費量も抑えていかなければなりません。太陽光は電気に変えるだけでなく、その熱も利用して温水に変えることが効率的です。いったん電気にしてそれを熱に変えるよりも、熱そのものを利用した方が変換のロスが少なくなるからです。
家と自然エネルギー
こうした考え方は、家の建て方も変えていくことになるでしょう。なるべく風の流れにそって開口部の向きを考えたり、太陽の光を計算してなるべく家の中に光を取り込みエネルギーを蓄えていったり。地中の空気を家の中に入れて、温度を一定に保つような仕組みも、もっと活用されるでしょう。家の断熱性能や機密性能ももっと上がり、できるだけ小さなエネルギーで効率よく暮らすことになります。こうした自然エネルギーは、太陽光・風力・太陽熱・地中の空気の循環など、さまざまなエネルギーを積み上げて、全体でまかなうように考えることも必要です。なにしろ、相手は「自然」なのですから。また、余ったエネルギーをどう蓄積するかも課題です。不足しているところに供給していく仕組みを考えたり、蓄電する仕組みなども必要になってくるでしょう。近い将来には、水素に変換して保管するという方法もできそうです。
なつかしい未来へ
車に求められるものも変わりそうです。速さを追求してきた車は、できるだけエネルギーを使わずに、安全に確実に地域内を移動する手段に変わっていくでしょう。また車を使わない時は、エネルギーを蓄える蓄電機能として使われるようにもなるでしょう。
こうした考えによって生まれる暮らしや家のかたちは、かつて通り過ぎてきた共同体の風景に似てくるかもしれません。しかし、それを支えるのは最先端の技術です。「なつかしい未来」と言えるかもしれません。どこかで見たような風景に最先端技術を搭載していくのです。
エネルギーを自分たちの手でつくることは、いまや時代の要請とも言えます。と同時にそれは、エネルギーの大切さを一人一人が実感していくことにもつながるでしょう。食べものを自分でつくることによって、その大切さがわかるように。最も求められているのは、実はそうした価値観の変化なのかもしれません。暮らしに必要なものを自分や地域でつくり、それが目に見えるようになること。そのことが、今の時代に一番必要なことのように思えます。自然に寄り添うように生きること、人間が他の動物や植物と同じように自然との共存関係を取り戻していくこと。これからの技術の進歩は、そのためにこそ使われることになるでしょう。
エネルギーを自分たちでつくる──みなさんはどのように思われますか?
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