自分でつくる ―セルフビルド(自分の家を自分でつくる)―
「セルフビルド」という言葉をご存知ですか? 家づくりの方法の一つで、文字通り「自分の家を自分でつくる」こと。完全に一人でつくるのは無理だとしても、あらかじめ用意されているキットを買ったり、自由に設計してそのパーツを購入して組み立てるという方法です。実際に自分で家をつくった人の話を聞くと、その家への愛着は人一倍で、隅々までいろいろなエピソードが詰まっています。
プロの手も借りながら
セルフビルドと言っても、一から十まで完全に自分一人でつくるのはむずかしいもの。そこで多くの人がとっているのは、自分の手に負えない部分は専門家に応援を頼むという方法です。基礎や設備配管などはプロの人に頼んだり、柱や屋根といった大きい部分までを業者の人に頼み、あとは自分でコツコツとつくり続けるといった具合。それでも、一年ぐらいで一つの家が完成するようです。
工事費が安く上がるということもあるにはありますが、セルフビルドをする人が何より大切にしているのは、自分でつくる喜び。つくりながら考えることでいろいろな工夫ができ、それがそのまま楽しみになるのです。また、家の内部の構造がわかっていますから、その後のちょっとした修理も簡単にできるようになります。
「思い」の通りに
現代では、家をつくることはプロの仕事というのが一般的な考え方ですが、人任せにすると、そのプロセスが見えなくなっていきます。また施工途中での変更は手間もお金もかかりますから、途中で気づいたことがあっても変更しにくく、完成後に「こうしておけば良かった」と悔やむことも起きるでしょう。何年かたって改装や修理などの手直しをするのも、よく聞く話です。
でももし自分でつくるのなら、そうしたことは問題になりません。工事の途中でも変更できますし、構造をよくわかっているので後になってからの改修も自分でできます。さらに、こうしたことが前提なら、初めからつくり込まずに、住みながらその時の状況に合わせて変更していくことだって可能です。
もう一つ大事なことは、ものの値段がわかること。今の建築では、ものそのものの値段はよく見えません。キッチンがいくらなのか、トイレがいくらなのか。そこには、施工の手間やいろいろな経費が含まれています。そして「坪単価いくら」という工事費に、まんべんなく、同じようなグレードの商品がちりばめられています。でも、人によってこだわるところは違うはず。10万円のキッチンがあっても、500万円のキッチンがあってもいいはずです。自分にとっての「優先順位」を大切にできるのも、セルフビルドの利点と言えましょう。
自分の暮らしを人任せにしない
自分の家を自分でつくることができれば、家への考え方が、もっと言えば暮らし方への考えが、変わってくるかもしれません。
自分の家を自分でつくるということは、自分の暮らしを人任せにしないということ。こうした考え方は、家に限らず家具や衣類など生活全般にも通じることでしょう。暮らしに関わるものを、できるだけ自分の手でつくる。そうすることで、ものと人との関係が近づき、大切に長く使うことにもつながっていくはずです。そのために必要なものは、時間というゆとり。現代人に最も必要なものは、自分のために家族のために使える「時間」なのかもしれませんね。
自分の家を自分でつくるセルフビルド。みなさんは、どう思われますか?
家一軒まるごとつくるのは難しくても、マンションのリノベーションぐらいなら、かなりの部分を自分でできるかもしれませんね。
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