研究テーマ

それでも暮らしは続いていく

東日本大震災、それに続く原発事故と、未曽有の大災害に見舞われた一年がようやく終わろうとしています。その直前まで誰もがあたりまえのように享受していた「日常」が、瞬時にして崩れ去るという体験を通して、私たちの暮らしへの意識は大きく変わりました。そして、エネルギーが有限であることも再認識させられました。原発被害の大きさは想像を超え、9カ月たったいまも、課題は山積みのままです。

こうした状況にあっても、それでも私たちは生きて、暮らしを続けています。大きな悲しみを乗り越えて、なんとか生きることへの希望を取り戻し、前を向いて歩きだしています。終戦後の日本の立ち直りがそうであったように、失くしたものの大きさや悲しみの大きさが、次の行動へのエネルギーに変わっていくのかもしれません。
そしてそれは、単に生きていくというだけではなく、誰かのために、次の時代のために、またよりよく暮らすために、生きているとも言えるのではないでしょうか。あの大震災の中でも自分たちの行動を律した日本人の特性は、世界に誇れるものでしょう。

「この世の生きもので、人間だけが他の生物や動物のために生きることができると」と聞いたことがあります。私たち人間は、隣人や仲間や地球環境のことを考え、自分と同様に他者を愛することができます。
原発禍で作付けできなかった被災地の農家が、飛来してくるツバメのために、田んぼに水だけ張ったという話も聞きました。「田んぼに水がなきゃ、巣を作んの難しいんでねえか」・・・米作りができないという悲嘆の中でも、他の命に愛を注げる強さとやさしさ。「愛する」という気持ちを携えてたくましく生きていくこんな姿勢が、これからの日本の未来を大きく変えていくに違いありません。

そしてまた、この震災を機に、私たちは地域や家族、友人とのつながりの大切さも実感しました。高度成長の中で経済効率を優先し、人と人とのつながりを後回しにしてきた現代人に、もう一度、「暮らしとは何か」ということを問いかけられたような気もします。家族と共に囲む食卓やそこでの笑顔など、日々のささいな喜びが明日の糧になる。そんな幸せに、気づいた人も多かったことでしょう。幸せの基準をどこに置くか・・・価値観の大きな転換期に来ているのかもしれません。

言葉に表せないほどの悲しみを体験した一年が、いま、過ぎようとしています。
それでも、みんな生きている。暮らしは続いていく。
年の瀬にあたって、人間のたくましさを再確認したくなりました。
みなさんにとって、今年はどのような年だったのでしょうか。
そしてこれからの未来、どんな暮らし方をしていきたいと思っていらっしゃるでしょうか。
ご意見・ご感想をいただければ幸いです。

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