研究テーマ

2つの場所に住む

最近、週末だけ地方や環境のいい場所に住む、という人の話を聞きます。海の近くや山の中など、自然の豊かなところに住む人たちのことです。かつて流行った別荘と違うのは、休暇や休みの時に行くのではなくて、生活のベースを地方に移していること。そして平日は、都心の便利なところに住んで仕事をする、という暮らし方です。

地方の土地の安いところに自分の思い通りの家を建てる、というのは、たしかに合理的な方法かもしれません。
広い敷地に家庭菜園やハーブガーデンをつくったり、趣味のための部屋をつくったり、薪ストーブを設置してみたりと、都心の家では実現できないような家づくりも、地方であれば実現しやすいでしょう。また、近くの海でサーフィンをしたり、川で釣りをしたり、地元の食材で料理したり、友人を招いてパーティーをしたり・・・週末の家では、自分の趣味も思いっきり楽しめます。都心の暮らしでは自然に接する機会が少なくなっていますが、電車で2時間ばかり移動するだけで、自然にあふれた環境に住むことができるのです。
そして、そんな家がベースにあれば、都心での暮らしはモノをあまり持たず、ミニマムな家でも快適に住むことができるかもしれません。

こうした考え方は、「住む」ということについて自由な発想をもたらしてくれます。私たちはいつの間にか、「マイホームは一ヵ所」という固定観念に縛られていたかもしれません。多くの人が、限られた予算の中で、なるべく都心に近くてスペースも確保できるぎりぎりのところを探して家を建ててきたのも、そのあらわれでしょう。
都心の理想の場所で、快適な広さを確保しつつ、好きな家を建てたりマンションを購入しようとすると、大抵の人にとって、その価格はあまりにも高すぎます。そこで、どうしても郊外の住宅地に住むことになります。
この数十年、日本では電車の沿線上に街がどんどん開発されていきました。大型のスーパーがあり学校があり、病院もありと、日常の生活が満たされるような一大ベッドタウンが次々とつくられていったのです。その結果、郊外といえども土地の価格は決して安くないものになり、あらかじめ建てられた代わり映えのしない風景の中に住むことになりました。電車に揺られ長い時間かけて会社に通うことになり、ベッドタウンという名前の通り「眠りに帰る街」になってしまったのです。

でもここで紹介したような考え方であれば、学校やスーパーのこともあまり気にしなくていいでしょう。山の中や海のそばというだけでなく、地方の住宅地の中に格安の土地を見つけることもできるでしょう。
「歳をとったら田舎に帰ってのんびり過ごしたい」という話もよく聞きますが、老人になったら便利な都心で暮らして、若いうちにこそ地方の生活を満喫するほうが現実的かもしれません。

「2つの場所に住む」という住まい方は、これからの家の持ち方や住まい方に、新しいヒントを投げかけているように思います。
みなさんは、こんな暮らし方について、どう思われますか?
ご意見、ご感想をお聞かせください。

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生活雑貨

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