家の型紙
アメリカには、HOUSE PLAN/HOME PLANという種類の雑誌がたくさん発売されています。伝統的なデザインやフランス田園風、地中海風、山小屋風などなど、数十種類のテーマやスタイル別になった住宅のカタログ雑誌です。そこには、大きさや家族構成別に100種類ぐらいの家の間取りとパースが掲載され、基本図面だけ、より詳細な図面、さらには部材表まで、といったいくつかの段階によって値段が決められています。そして、ユーザーはこの中から気に入ったものがあれば選び出し、自分の家づくりに活用するという仕組み。その図面をもとに、好きな工務店に依頼したり、基本部分だけ大工さんに頼んであとはこつこつと自分でつくったり、中にはすべてを自分でつくってしまう人もいるようです。
設計図を買うということ
家の様式を好き嫌いで選ぶことについての善し悪しは、今回は触れないことにします。それよりも、設計図面を売り買いするという、この仕組みについて考えたいと思います。これは、敷地が広いアメリカだからできることなのでしょうか?
日本のように狭い敷地いっぱいに建てようとすれば、どうしても個別の設計が必要になります。建築基準法を適用した法的なチェックも必要です。しかし、ある程度の広さの敷地に自由に建てられるとしたら、どうでしょう? 日本の敷地に合わせた、小さな家のデザインや外観が設計図として売られていたら、どうでしょう?それぞれの暮らしに合わせて小さなカスタマイズはするとしても、家の基本を規格の設計図で選ぶ。合理的で安価に設計図が手に入るとしたら、さらにはキットで材料も安く買えたら、家づくりは大きく変わってくるかもしれません。
家を複雑にしない
暮らしのかたちは、本当に人それぞれです。しかし、だからといって家のかたちが様々かというと、そうでもないような気がします。家のかたちは一定でも、その中での暮らしは様々にしつらえることができるはず。間仕切りや設備類は自由に選んで、好きな場所に置けばいいのです。ぎりぎりの大きさのマンションなどではたしかに設計の手腕も必要ですが、一戸建てである程度の広さがあれば、規格設計の中から選んで自分でカスタマイズするという方法もあるでしょう。
家をシンプルにしておくことで、その後の暮らしの変化に合わせた変更やリフォームもしやすくなります。家のデザインも、奇をてらったものより、永く飽きのこないものを選ぶ方がいいでしょう。暮らしは、家の外側ではなく、中にあるのです。基本を規格で選んで、あとは自分に合わせてカスタマイズする。そんな日本流の家の規格設計図ができたら、それはまさに、「家の型紙」。
これからは、そういう時代が来るのかもしれません。
みなさんは、「家の型紙」という考え方について、どんな風に思われますか?
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