研究テーマ

陶磁器のリサイクル

私たちが日常使っている陶磁器の茶碗やお皿は、陶土と呼ばれる粘土質の土を主原料に作られています。しかし、その土は無限にあるわけではありません。最近は「良質な土」の枯渇化がすすみ、海外から土を輸入している陶磁器産地もあるとか。そんな中、陶磁器のリサイクルが進められているという話を聞きました。

陶磁器は1300℃前後の高温で焼いて作るため、これまで、リサイクルは難しいと考えられていました。しかし、その難問に取り組んでいる地域があります。岐阜県の美濃焼の産地です。「グリーンライフ21プロジェクト」と名付けられたその活動は、美濃焼の有志企業30社が集まって共同のプロジェクトとして始まりました。専門家や行政も一緒になり、1997年に研究会が発足。1年後には製品化が始まり、2000年には本格稼働しました。回収した陶磁器の使用済み食器を粉砕して原料に混ぜていくのですが、現在ではリサイクル原料を50%混ぜるまでになっているとか。売上げは5年前に比べて2.6倍に伸び、日本一の生産量を誇る美濃焼全体の3%近くを占めるまでに成長しています。
陶磁器のリサイクルは、配合率を増すことにより新しい陶土などの使用量を減らせるだけでなく、強度のある食器を作ることにもつながります。一度高温で焼かれた陶磁器のリサイクルではその工程で食器の破損要因が少なくなる特性があり、その分強度が向上します。そしてもうひとつの効果は、低温で焼成できること。すでに一度焼いた陶磁器が入っているためガラス化が進みやすく低い温度で焼成することができるのです。陶磁器の生産過程で使うエネルギーのうち、約80%が焼成工程に使うエネルギーだといいますから、焼成温度を下げられるということは、エネルギー消費の低減にもっとも貢献するといってよいでしょう。

このプロジェクトのリーダー、長谷川善一さんは、次のように語っています。
「大量生産、大量消費の時代を背景としてきた美濃焼の陶磁器ですが、消費の低迷と合わせて、原料の枯渇や低エネルギーへの転換など、社会的な課題が出てきました。自分たちの産業として、自分たちが生産したものにどう責任をもつか。そんなことを深く考えさせられて、この陶磁器のリサイクルプロジェクトがスタートしました。次の時代につなげていくための産業の役割を、本気で考えなければいけない、と思ったのです」

こうして順調に生産をスタートしたのですが、一方で課題もあります。それは、陶磁器の使用済み食器を集める方法です。今では、自治体で行政回収されたものが集まってくる仕組みが主であり、それにかかるコストも自治体側が負担しています。つまり、原料コストは「ただに近い」ということで成り立っているのです。しかし、産地ビジネスとしてとらえた場合、それは本来の姿ではないかもしれません。「生産者、販売者、使う人、それぞれの意識を改革して、使用済みや不用になったものは自らの力で資源循環できる仕組みも考えなければ」というのが長谷川さんの想いです。原料は、まだまだ不足しているといいます。
また、販売先の企業の開拓も、まだまだこれから。このプロジェクトの取り組みに共感した企業が取り扱いを始めてくれているようですが、彼らの活動はまだ知れ渡っているとはいえません。商品力や品揃えも、これから強化していかなければならないでしょう。
しかし、こうした取り組みが日本の伝統技術の分野で行われ、地域の産業の再生として取り組まれていることに、これからの時代の「あるべき姿」を感じずにはいられません。

日本には、世界に誇る職人の技術があります。その上にこうしたリサイクル技術が重なることで、かつての日本にあった「ものを大切にする文化」や「よいものを長く使う」文化が息を吹き返してくるような気がします。まだまだ課題のたくさんある陶磁器のリサイクルですが、多くの人がこの活動を知り、応援することで、回りだしていくのでしょう。

陶磁器のリサイクルについて、みなさんのご意見をお聞かせください。

[外部サイト]
グリーンライフ21プロジェクト www.gl21.org
(岐阜県多治見市、ディレクター 長谷川善一)

研究テーマ
生活雑貨

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