研究テーマ

無印電力 ─自分の使う電気を自分でつくる─

今回ご紹介するのは、小さな太陽光パネルをつくってみるという試みです。各地域でワークショップなどをおこないながらこの試みを進めているのは、イギリスに端を発した「トランジション運動」といわれるグループ。それぞれの地域で「鎌倉電力」「藤野電力」といった地域名をつけ、食・エネルギー・経済の自立を促しながら、社会との接点を見つけていこうと活動しています。

このトランジション運動は、「ピークオイル」と呼ばれる化石燃料資源の限界と「地球温暖化」という地球規模での環境破壊に対する危機感から生まれています。大量生産・大量消費という現代の暮らしを、「持続可能な暮らし」へと、どう変えていくのか。成長から縮退へと向かう時代の中、暮らし方そのものを変えていくことで、ダメージの少ない構造へ社会を変えていこうとしているのです。

そのカギになるのは、「自立」です。自立するには、「食」「エネルギー」「経済」といった3つの自立が必要です。そしてそれを可能にするのは、「コミュニティー」。生活の根本となる食やエネルギーの自立を通して、それを支えるコミュニティーを、どうつくっていけるのか。こうした課題に向き合いながら、現代の都市の中でその答えを見出そうと活動しているのです。ここではまた、雨水の利用や、排水・汚水をその地域内で浄化して再利用しながら、微量栄養素としてその地域の土に戻していくといったことも提唱しています。

太陽光パネルに話を戻しましょう。120センチ×55センチの長方形の太陽光パネルでつくり出される電力は80ワットです。もちろん、家一軒分のエネルギーをまかなえる量ではありません。しかし、そこで産み出される電気を「見える」ようにしてみることで、どのくらいのエネルギーが使われているのかを体感することができるのです。たとえば40ワットの裸電球なら2個分の発電量、蓄電しておけば夜の間中十分使えます。ちなみに発電するエネルギーは直流、使う電気も直流ですが、家庭用の電気製品を使うには一度コンバーター(変換機)を通す必要があります。

太陽光パネル以外に充電放電コントローラー、バッテリーを装着、さらに、一般の家電製品に使用するためには、直流から交流に変換するインバーターが必要となる。

太陽光パネルで家一軒分のエネルギーをつくり出そうとすると、5×5メートルぐらいのパネルが必要になり、施工費も200万円ぐらいかかります。思い切って大型のパネルをつけ電力会社に電気を買い取ってもらう方法もありますが、大きな設備投資になることは間違いありません。でも、自作のキットなら今回ご紹介したもので6万円程度。これなら、ちょっと試してみることもできそうですし、何枚か持つこともできそうです。天候を見ながら、今日の発電量を予測してそのエネルギーでどこまで使えるかを考えてみる─それだけでも楽しそうだと思いませんか? ちなみに、「よりよい未来を描き、その実現は十分可能であると信じ、楽しみながら取り組む」というのも、トラジション運動の特徴の一つだそうです。

エネルギーを自分たちでつくってみる。小さなパネルで、小さなエネルギーをつくってみる。一人ではなく、仲間と一緒につくってみる。それは、地域ごとにエネルギーを産み出す仕組みを考えることにつながっていくのかもしれません。地域でつくりだす小さな小さなエネルギー会社を「○○電力」と名付けて、活動のひとつにしてみてはいかがでしょう。
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