東京の未来 ─地方都市の未来─
2050年、日本の人口は今の人口から5000万人以上減って、8000万人程度になるだろうと言われています。また、65歳以上の高齢者の割合は40%を超えるだろうとも言われます。こうした数字を前にして、みなさんは、ご自分や子どもたちの未来をどのように思い描かれるでしょうか?
人口が8000万人になるということは、単純に考えると、人口密度が今の半分近くになるということです。もちろん世帯数はここまで減るわけではなく、一世帯あたりの人数が圧倒的に少なくなり、独り住まいの世帯が約半数になるのでしょう。世帯数は今の70%、人口は55%というのが実数です。そうであるならば、日本の住宅は空き家が増え、街にも空き地が増えていくことになります。
一方、東京の人口や世帯数はどうなるのでしょう? 全国の人口が減少する状況の中でも、東京の人口は増えると予想されています。雇用率も減少する中で、仕事の機会を求めて、人はやはり大都市へと流入していくのでしょう。都市から離れていく人も多いはずですが、それを上回る数の人が集まりますし、すでに住んでいる人たちは、歳をとってからも住み慣れた場所や便利な場所に住みたいと思うのかもしれません。一般的には、2050年にもやはり大都市と地方都市の人口は二極化していると考えられています。
たしかに、大都市は仕事をするには便利です。さまざまな刺激もあります。しかし、住む環境としては生活コストが高く、住宅を借りるにしても所有するにしてもお金がかかりすぎるのも事実です。
東京は「人口も世帯数も増える」というのがおおかたの予想なのですが、でも本当にそうなるのか、考える余地はありそうです。「人口は増えるが世帯数は減る」または「人口も世帯数も減る」といったシナリオもあるかもしれません。それは、「東京にはあえて住まない」という選択肢があるということです。仕事も、あえて東京でしない。地方に戻って仕事を考える、という未来です。未来は予測でもありますが、選択でもあるのです。そのためには、選択できる未来をデザインしなければなりません。
東京に対して、地方都市は人口も世帯数も減っていくと予測されています。空き地も空き室も増えます。ここで必要なことは、縮小していく都市を「デザイン」していくこと。計画をしておけば、たとえ長い時間がかかっても、緑の多い、また移動や交通網などの整備された住みやすい街ができていくでしょう。
地方都市では、中心市街地とそれを囲む衛星都市のようなコンパクトな街づくりが可能です。地域内の移動は徒歩や自転車、パーソナルモビリティーなどで行い、衛星都市同士は公共の交通機関で移動できれば、渋滞もなくなり、車道もなくなります。街は新しい姿になるでしょう。地方都市は、理想の暮らしを実現する大きな可能性も持っているのです。
地方にどのような産業を産み出していくのかという大きな課題はありますが、それには、地域内でつくったものを地域内で消費するといった地域内循環の仕組みがヒントになりそうです。大都市に比べて収入は少ないかもしれませんが、その分、支出も減ります。家賃も低くなりますし、土地代も安いでしょう。地域内の相互扶助も行われ、食料自給の可能性も高くなります。
東京の未来はどうなるのか──その問いに答えるには、まだまだたくさんの課題があるでしょう。それには、地方都市の未来と合わせて考える必要がありますし、また自分たちの豊かさの基準をどこに置くかによっても変わってきます。より多くの収入を得て、より多くのものを持つことが幸せ、といった価値感を満たすには、都市で働くことが好都合かもしれません。しかし、より多くを求めることが本当の豊かさなのか、考えてみることも必要でしょう。
未来を考える一歩は、私たちの心の中にあるのだとも言えそうです。
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