ダンボールコンポスト
生活をしていれば、毎日のように出る生ゴミ。みなさんは、その生ゴミをどうしていらっしゃいますか? コンポストを使って自分で処理するという方法もありますが、庭に設置するタイプや高額なものはハードルが高く、なかなかむずかしいのが現実です。でも、段ボール箱で簡単に作ることができて、ベランダにも置けるコンポストがあるとしたら、どうでしょう?今回は、その気になれば誰でもできそうなダンボールコンポストをご紹介します。
日本はゴミ焼却大国?
かつての日本では、調理クズや食べ残しなどの廃棄物は、集めて家畜のえさにしたり、積んで堆肥にしたり、土に埋めたりしていました。しかし都市化が進むに連れてゴミの量が増え、市町村が集めて燃やす「清掃」としての焼却処理が始まります。環境省の資料(平成22年度)では、現在の日本のゴミ焼却炉の数は1200基ほど。これは世界中の大型焼却炉の約6割ともいわれ、日本ほど多くのゴミを燃やしている国は類を見ません。日本の1年間のゴミ処理費用は1兆8000億円強にもなり、そのうち生活系のゴミが約65%。なかでも約80%が水分といわれる生ゴミは、燃やすのに大量のエネルギーを必要とし、食べ残しもかなり含まれるという調査もあって、考えさせられます。
食品の製造加工業者や飲食店など事業系の生ゴミは、食品リサイクル法で再生利用することが義務付けられていますが、家庭ゴミの場合、どう減らすかは個人に任されているのが現状。ゴミの焼却量を減らせるかどうかは、私たちの意識にかかっているともいえるでしょう。生ゴミを減量・堆肥化させるコンポストが注目されているのは、そんな理由もあるのです。
段ボール箱で作る生ゴミ処理器
家庭用コンポストには樹脂や木製のもの、電気式のものなどがありますが、ダンボールコンポストは段ボール箱で作る生ゴミ処理器です。その原理は、段ボール箱のなかに基材(モミガラくん炭やピートモス、おがくず、わらなど)と生ゴミを入れ、微生物の働きで分解させるというもの。もちろん電気も使いません。そもそもは、外に設置した堆肥化容器が冬場に凍結してしまう北海道で、屋内でも使えるものとして始まったといいます。
当サイトの「ご意見パーク」に投稿してダンボールコンポストを紹介してくれたのは、白倉俊也さん。自治体主催の講習会に参加して、段ボール箱のなかで微生物によって生ゴミが分解されることに感動して以来、これを広めたいと活動しているそうです。
作ってみたら
ダンボールコンポストは、自分で簡単に作ることもできます。白倉さんのブログをお手本にダンボールコンポストを実践している人の話では、容器を作るのにかかる時間は30分程度。用意するものは、ダンボール箱と新聞紙、ガムテープ、もみ殻くん炭とピートモスで、もみ殻くん炭とピートモスはホームセンターなどで簡単に手に入るといいます。みかん箱(30×37×43cm)で作り、家族3人分の生ゴミを投入し続けているそうですが、微生物に分解されて嵩(かさ)が減るため、1か月たった時点で、まだ箱の半分にも達していないとか。微生物のチカラによって悪臭もなく生ゴミが分解されていくさまは、感動的だといいます。ただ、微生物の発酵を促すために、生ゴミを入れたら必ずかき混ぜる、発酵が遅くなってきたら生ゴミの投入を少し休む、虫対策に布などでカバーをする、といった配慮は必要。また、米糠や有機肥料などを少量加えると発酵パワーアップもできるそうです。
微生物の飼育箱
微生物には好気性の発酵菌と嫌気性の腐敗菌があり、生ゴミの成分を栄養素に転換させるのは好気性の発酵菌です。この菌は、生ゴミを分解するときに酸素をたくさん使います。条件さえ整えてやれば、発酵が進み、温度が上がり、水蒸気が出てきます。この水蒸気を適度に逃がすのに、ちょうどいいのが段ボールなのです。とはいえ、生ゴミを入れて放置したままでは、水分過多になって酸欠が起き、腐敗菌が働き始めて悪臭が発生してしまうことに。そこで、かき混ぜて酸素を行き渡らせ、発酵菌の生ゴミ分解を手助けしてやります。ダンボールコンポストは、いわば微生物の飼育箱のようなもの。この小さな微生物と上手に付き合うことで、大量のエネルギーを使って燃やさなくても生ゴミが土にかえせるとしたら、素敵なことだと思いませんか。
ダンボールコンポストの魅力は、簡単に作ることができるだけでなく、生ゴミを通して微生物という目に見えない生きものの存在を意識できるところにもありそうです。自治体によっては作り方の講習会を行っているところもあり、子どもの夏休みの自由研究としても人気があるとか。みなさんもダンボールコンポストを試してみませんか。
段ボールコンポストの作り方などは、白倉俊也さんのブログで詳しく紹介されています。
白倉俊也さんのブログ「自分でつくる『ダンボールコンポストの作り方』」