研究テーマ

音楽と楽器

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世界にはさまざまな音楽があり、それを演奏するための楽器があります。世界中の音楽を楽しめる環境になり、お金さえ出せばどんな高価な楽器も手に入れられる現代。でもその楽器について、私たちはあまり深く考えたことがないかもしれません。

人と楽器

世界最古の管楽器の一つといわれるものに、オーストラリア大陸の先住民、アボリジニが1000年以上前から使ってきた「ディジュリドゥ」があります。アルプスホルンのような長い管の楽器といえば、ご存じの方もあるでしょう。
その楽器は、中心部を白アリが喰い尽くして空洞になったユーカリの木でつくられたもの。その空洞を風が通りぬけるときに発した音を聞いて、楽器として使えることに気づいたといわれます。唇の振動で響くウォーンという木の音は、宇宙飛行士が宇宙で聞いた音ともいわれ、イルカやクジラとコンタクトすることができたという話も。ヒーリング効果もあるといわれ、祭りや儀式の他、治療に使われることもあるといいます。
また、ドイツ南部にある石器時代の洞窟遺跡で発見されたのは、ハゲワシの翼の骨を削ってつくった4万年前のものと思われるフルート。同じ場所からはマンモスの牙でつくられたフルートの破片も発見されていて、そんな遠い時代から音楽が人とともにあったことに驚かされます。息を吹き込めば音の出るもの、叩いたりはじいたりすると音の出るもの…さまざまなものが楽器になることを人類は早い時期に発見し、有史以前から音楽を楽しんできたようです。

楽しむための楽器

Recycled Instruments Orchestra of Cateura Facebookより

パラグアイに「リサイクルド・インストゥルメンツ・オーケストラ・オブ・カテウラ( Recycled Instruments Orchestra of Cateura) 」というオーケストラがあります。メンバーは、アスシオンのカテウラ地区や近隣する地域に住む子どもや青年たち。このオーケストラの楽器(写真)は、なんと、ゴミからつくられています。カテウラ地区にはスカベンジャーと呼ばれるゴミ処理で生計を立てている人が多く住んでいて、そのスカベンジャーが集めたゴミを楽器職人がリサイクルして生まれた楽器なのです。楽器店に並んでいる楽器と比べると手づくり感にあふれていて、玩具のような音を想像しがちですが、どうしてどうして立派なもの。このオーケストラはこうした楽器を使って、タンゴやサンバなどのラテンアメリカ音楽はもちろん、ビートルズなどのポップス、そしてモーツァルトやヴィヴァルディなどのクラッシックまで演奏します。ドイツ、スイス、オーストリアなどへのコンサートツアーも行い、2008年にはパラグアイの首都アスシオンのCatholic University of Asunción のTomas Moro Institute よりTomas Moro アート賞を授与されました。

1000年の歴史を持つヨーロッパ起源の楽器、サンフォーナの現代版。左のクランクで白い車輪を回してバイオリンのように弦を擦り、白いアーチの部分がバイオリンの弓の役割をして音を出します。写真は、無印良品BGMのレコーディング時にスペインの演奏家が持参した、精度の高いプロ用

太古の昔から、人は自分たちの音楽を奏でるために、身近な素材を使い、自分の手で工夫して楽器をつくってきました。時代が進むにつれて、楽器職人が生まれ、演奏家と共に音楽と共に、より高度なものに。もちろん、音楽表現の幅を広げるという意味では進化に違いありませんが、最近では楽器の性能ばかりに目が行きがちで、音楽を奏でるという楽しさが忘れられかけているような気もします。音楽とは、文字通り、音を楽しむこと。パラグアイのオーケストラの活動は、「音楽とは、楽器とは、何か」という音楽の原点を考えるきっかけになるかもしれません。

みなさんは、音楽と楽器について、どんなことを感じていらっしゃいますか?
ご意見、ご感想をお寄せください。

※画像1:約150年前のアコーディオン。蛇腹で空気を出し入れし、金属製のリードをならして音を出すシンプルな構造です。上の8枚の長方形が鍵盤。

[関連サイト]
Recycled Instruments Orchestra of Cateura
資料映像: http://www.youtube.com/watch?v=fXynrsrTKbI
活動状況Facebook : https://www.facebook.com/landfillharmonicmovie

研究テーマ
生活雑貨

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