元気の源は自分の中にある
まだヨガのように広く知れ渡ってはいませんが、徐々に世界に広がりつつある健康法に「気功」があります。気功とは、天地のエネルギーを体に取り入れ、体を強化していく身体術。今回は、その体験レッスンを通して気づいた、体と心の関係についての話です。
気功には養生気功と武術気功とがあり、私たちがよく見かけるのは、ゆったり体を動かす養生気功です。これに対して武術気功は、武術の鍛錬のために気を養うもの。体をじっと動かさずに、長時間、同じ姿勢を保ちます。
今回お話を伺ったのは、その武術気功を基本に、ご自身で発展させた「源気功」を広めている栗原宏樹さん。栗原さんは、さまざまな日本の伝統武術の修練を通じて「気」の存在に気づき、その後、中国拳法の修練を積んでいきました。そしてそれらを発展させ、心を解放することで体の健康を実現させる方法として源気功を考えだしたといいます。
笑いが意識を変えていく
源気功の教室では、なんとも愉快な練習をしています。みんなが大声で笑いながら、気持ちよさそうに体を動かしているのです。
笑いを取り入れることで、日常のつまらないことを忘れていきます。大声で笑っていると、さらにおかしくなって、笑いの渦が生まれます。今の瞬間を最高に幸せな感情で満たしていくことで、心が解放されていくのです。「あ~、幸せだ」と心の底から思えると、緊張がとれていきます。気功が「立禅(りつぜん:立って行う瞑想法)」とも呼ばれるのは、座って行う座禅に対し、動くことで心の中を空にしていくから。そして、笑いは心を空にしてくれる助けにもなるのです。このように緩んだ気持ちで立つと、頭のてっぺんのツボが開き、天からの気が入ってくるのだとか。その「気」を丹田(たんでん:下腹部の、へその下にあたるところ)のあたりに溜めていくと、体中に元気がみなぎります。天からの「気」を集めて、体の中に入れていくのです。そして「気」を移動させ、体の隅々まで行き渡らせていきます。そのときに大事なのは、姿勢。まっすぐ立つことで「気」の通りがよくなるだけでなく、その姿勢が体に軸をつくります。軸があることで、さらに体は自由自在にどのような形にもなっていくことができるのです。
想像力が体を変えていく
イメージをふくらませていくと、体の中に空気を通したり、水でいっぱいに満たしたりと、体を自由にコントロールできるようになっていきます。時には水になり、時には空気になり、まるで体が自然の一部に溶けていくような感覚。空をも飛べるくらい自分の体を軽くしたり、誰も持ち上げることができない石のように重くしたりもできます。そうなればもはや、自分の体は自由自在。水のようになれば、まるで水の中に融けていくかのようです。まさに想像力は源気功において一番大切なもので、いくら姿勢や呼吸を整えても、想像力がないと気は動かせません。姿勢と呼吸だけでも体の健康には役立ちますが、気を動かして何ともいえない心地よさを体と心に感じるためには、想像力を使うことがキーになるのです。
気と気が交わる
源気功では、相手に対して気を出し、そして相手の気を取り込み、また気を返すということをします。これは、お互いの気を極限まで高める手法。元々は古い武術の技にあった神髄を、健康増進を目的に昇華させたものです。それによって、相手に触れずして、いとも簡単に大きな体が宙に舞うこともあります。昔の武術の達人には、気で相手を飛ばす人がいたと伝説的に言われていますが、力みや敵対心が入るとそのような神業は使えません。源気功では、相手と一体になって「気」だけの動きをつくりだし、古来神業だったものを再現しているといいます。
自分の中にある力
「源気功」とは、元気の源は自分の体の中にある、という意味だそうです。自分の中にすでに存在している、未知なる力に触れる「気功」。体に触れずして宙に舞うなど、ウソのようにも聞こえる話ですが、見方を変えると、こうした目に見えない力で満たされているのが人間の体なのかも知れません。そして、見えない力の大きさに気づいたとき、本来の自分に戻り、体が自分で元気になっていくのでしょう。
意識・呼吸・姿勢・動きを調えながら、心と身体を解放していく源気功。「古今の武術の鍛錬法を基本に取り入れてはいますが、目指すところは、武術の達人を超えて、自分らしい人生を送れる"心の達人"」と栗原さん。心と体の深い関わりを示唆する言葉と言えそうです。
さまざまな健康法の中で、今回は気功の一種、源気功をご紹介してみました。みなさんは、体のために、何かよいことをしていらっしゃいますか?
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