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スーパームーンを見よう

「今夜の満月はやけに大きいね。気のせいかな」。いいえ、気のせいではありません。実際にいつもより月が大きく見えることがあるのです。それが「スーパームーン」という現象。直近では来週、8月10日の夜から11日の明け方にかけての満月がスーパームーンになります。今回は潮の干満を引き起こし、人体にも影響を与える地球の唯一の伴侶、月の話をします。

スーパームーンとは

月はおよそひと月かけて地球の周りを回っています。地球を回る軌道が完全な正円なら、月はいつも同じ大きさに見えるはず。でも、実際は違います。月の軌道は少しだけ楕円形に歪んでいる。そのため地球から月までの距離は一定にはなりません。近いところで約35.6万㎞、遠いところで約40.6万㎞と、わずかな差が生じます。この距離の差が目で見る月の大きさに反映され、地球に最も近づく月は、遠くにある月より、直径で約1.14倍大きく見えます。面積にすると1.3倍ほど。つまり、約30%も大きく明るく輝いて見えるのです。これが「スーパームーン」と呼ばれる満月。前回は2013年の6月23日に観測されました。そして次回はもうすぐ、8月10日の夜から翌朝にかけての満月がスーパームーンになります。

月の起源

夜空を見上げればあたりまえのようにある月ですが、どのようにして誕生したかは、いまだ謎のままです。JAXAの「宇宙情報センター」というホームページでは、月の誕生には4つの説があると紹介しています。一つ目は太陽系ができるときに地球と一緒にできたという「双子説」。二番目は地球の自転が今より速かったため、遠心力でちぎれた地球の一部が月になったという「親子分裂説」。三番目は地球の近くを通過した小天体が、重力によって捉えられて月になったという「捕獲説」。そして、四番目が原始地球に他の天体が衝突し、地球や小天体の破片が集まって月になったという「巨大衝突説(ジャイアント・インパクト説)」です。
なかでも有力視されているのが、「ジャイアント・インパクト説」。この説なら月の化学組成が地球のマントルと似ていることや、平均密度が地球に比べて低いことなど、月の特徴をうまく説明できるとのこと。また、コンピューターの進化で、シミュレーションを用いて、実際に月ができる様子が再現できるようになりました。そのシミュレーションによると、天体が衝突して月が完成するまでの期間は、ひと月足らずだったとか。あの巨大な月がわずか1ヶ月でできてしまったというのですから驚きですね。

月の引力

月の引力は地球にも大きな影響を及ぼしています。その最たるものが、潮の満ち引きでしょう。月の引力が海水を引っ張るために、海は1日2回、6時間置きに「満潮」と「干潮」を繰り返します。また、満月や新月の日には月・地球・太陽が一直線に並ぶため、月の引力に太陽の引力が加わって「大潮」になります。ちなみに月と地球が最接近するスーパームーンの日は、引力の影響も増大し、いつもの大潮より干満の差が大きくなります。
そして、潮の満ち引き以外でも、月の引力は私たちの暮らしに影響を与えているといわれています。たとえば満月のときにはお産が多いという説、これは助産師さんの間でも信じている方が多いとか。アメリカのA.L.リーバー博士は月と出産の関係を研究し、満月と新月の時期に出産数が増加傾向にあるという説をその著書で発表しました。他にも、ウミガメや珊瑚は満月の夜に産卵する、満月の日は事故や犯罪が増えるなど、月が人間や生物に与える影響には諸説あります。もっとも、こういった説は迷信で、科学的な根拠に乏しいと主張する人もいます。

月光の神秘

しかし、たとえ科学では説明できなくても、人は感じることができます。月の不思議な力を。煌々と輝く神秘の美しさを。月は地球とほぼ同時期に誕生し、生命の生まれる以前から空にあり、私たちの星を照らしてきました。この地球には、そして私たちの体には、太陽と同じく月のリズムが刻まれています。
以前のコラム「カレンダーと暦」でもご紹介しましたが、私たち日本人は明治6年に新暦が採用されるまで、およそ一千年の長きにわたり月の満ち欠けを基準にした「太陰太陽暦」を用いてきました。農耕民族である私たちは、月の動きを通して季節の移り変わりを知り、月のリズムに合わせて暮らしを組み立ててきたのです。私たちの体には、知らないうちに月が入っている。漢字の部首の「肉偏」が「肉月」へと変わっていったのも、単なる偶然ではないのかしれません。

華やかなイルミネーションに飾られた都市では、月は存在感を失い、満月の夜ですら見上げる人は少なくなりました。でも、月が放つ冴え冴えとした光は、太陽や人工の照明にはない、人の心を虜にしてしまう妖しい美しさを宿しています。
2014年8月11日、月が地球に最接近するのは午前3時頃とのこと。ちょっと早起き(夜更かし?)して、夜空に輝くスーパームーンを眺めてみませんか。曜日は奇しくも月曜日です。

[参考文献]
H-IIA13号機/「かぐや」特設サイト
宇宙情報センター

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