研究テーマ

花のある暮らし

5月の「母の日」には、花屋の店先でカーネーションを買い求める人の姿が多く見られました。「母の日」のように花とセットになっている行事はともかく、ふだんの暮らしのなかで、私たちはどのくらい花に親しんでいるでしょう? ある調査によると、「最近1年間で切り花を買いましたか?」という質問に対して、「はい」と答えた人は60%、「いいえ」は40%だったそうです。

気持ちを伝える花

加藤登紀子さんのヒット曲「百万本のバラ」は、女優に恋した貧しい画家が、小さな家もキャンバスも売り払って、女優の住む部屋の窓から見える広場を百万本の真っ赤なバラでうめつくす、という内容でした。
百万本のバラは無理にしても、自分の気持ちを花に託して贈るのは多くの人がやっていること。行事や記念日に花を買う人が多いのも、そんな理由からでしょう。ビジネス街にある駅ナカの花屋さんでは、年々、男性客が増えているといいます。シャイで愛情表現がヘタと言われてきた日本の男性の意識や行動も、変化しつつあるようです。

自分のために花を買う

贈りものだけではありません。その調査で、「自宅観賞用」、つまり「自分のため」に花を買うと答えた人は、「いつも」「時々」と合わせて40%ありました。自分のために「時々」買う花には、「悲しいとき」と「うれしいとき」の2つのパターンがありそうです。
前者で有名なのは、石川啄木の歌。 ━━友がみな 我よりえらく見ゆる日よ 花を買い来て妻としたしむ━━ 『一握の砂』
活躍している友人たちに比べて自分が見劣りするように思えたとき、花を買い、妻と一緒にそれを愛でることで、気持ちを紛らわせたというものです。
一方、「自分へのご褒美」として買う花は、後者のパターン。ご褒美は高価なものである必要はなくて、ていねいに淹れた一杯の紅茶であったり、お気に入りのスイーツであったり…そんなとき、一輪の花をプラスして、自分のために飾ってみる。そうした行為は、日々の暮らしに彩りを添えてくれるだけでなく、自分の日常を愛おしむことにもつながるでしょう。実際、一輪の花をテーブルに飾るだけで、その周囲をきれいに片付けたくなったりすることもあるとか。
悲しいにつけ、嬉しいにつけ、人の心に寄り添ってくれるのが花なんですね。

長もちさせるために

花の命は短いもの。とはいえ、できるだけ長もちさせる工夫はしたいものですね。そのために専門家がすすめるのは、まず、専用の花ばさみを用意すること。専用のそれは、普通のはさみより刃が短くつくられていて、余計な力を入れずに茎や葉を切ることができるから、水を吸いあげる導管をつぶさずにすみ、花も長もちするといいます。
そして、家に持ち帰ったら、必ず水切りをすること。水を張った容器の中で、2~3回に分けて5mmくらいずつ茎を切ることで、花首まで水が上がりやすくなり長もちするそうです。また、花瓶などに活けかえるときは、水につかる部分の葉をていねいに切り取ること。葉が残って水につかったままになると、雑菌が繁殖して水が汚れ、吸水力が低下してしまいます。

うつろいを楽しむ

同じ調査で、切り花を買わない人は「枯れる」ことを最もいやがっていることがわかりました。続いて、「維持管理が面倒」「置く場所や花瓶がない」という回答も上位を占めていたそうです。
そもそも花は命のある生きものですから、うつろい、次第に枯れてゆくのは自然なこと。買ったときは茎の長かった花も、水切りを重ねるうちにだんだん短くなっていきます。それに合わせて活ける器や置き場所を替えていくのを、楽しみのひとつととらえるか、面倒と思うか。どうやら、分岐点はこの辺にありそうです。楽しむ派では、最後の最後には、水を張った容器に花びらを浮かべて楽しむ、という人もあるようです。
また、一輪の花を飾る場所として専門家がすすめるのは洗面所。「湿度と温度が安定した理想的な環境」で、「一輪だけで、空間が動くような感覚を味わえ」「鏡を見る時に花が見えると顔の表情も変わる」といいます。

「花より団子」という言葉があるように、花がないからといって飢え死にするわけではありません。それだけに「花はぜいたく品」と思われがちですが、自然から遠ざかり時間に追われることの多い現代人だからこそ、一輪の花の存在が大切な気もします。「スイーツを買うような感覚で、500円で花を一、二輪買うことから始めてみては?」とすすめる専門家も。枯れるのがいやな人は、もちろん、鉢植えでもよいでしょう。日々の食事が身体に与える栄養なら、生活空間を彩る花は心に与える栄養といえるかもしれません。
みなさんは、暮らしのなかで、どんな風に花を取り入れていらっしゃいますか?

研究テーマ
生活雑貨

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