研究テーマ

朝をたのしむ「朝活」

学校の運動部や音楽部では、授業が始まる前の1~2時間を朝練(早朝の練習)にあてることがよくあります。昨今高まっている部活動についての見直し論はさておき、清々しい朝の空気の中で好きなことに時間を費やす気持ちよさは、経験したことのある方なら実感としておわかりでしょう。そんな壮快感を求めてか、大人の間でも「朝活(出社前の朝の時間帯を利用した活動)」が盛んになっているようです。

著名人の朝活

イギリス初の女性首相となったマーガレット・サッチャー氏は、毎朝5時に起きて、一日の計画を立てたといわれます。「早起き」で検索すると、他にも、建築家のフランク・ロイド・ライト氏やアメリカのオバマ大統領夫妻など、著名人の名前が出るわ出るわ。コトを成し遂げる人たちは、ご本人の資質に加えて、どうやら朝の時間の使い方が違うらしい、ということに気づかされます。
世界有数の経済誌『Forbes』でも「成功者が午前8時までに行っている5つの習慣」と題して、

  • 1.運動する
  • 2.スケジュールを立てる
  • 3.健康的な朝食をとる
  • 4.想像してみる
  • 5.やりたくないことを先にやる

と紹介。たしかに朝の時間にこれだけのことをやれば、その後の一日だけでなく、人生そのものにも影響を与えるかもしれませんね。

早起きは三文の徳?

朝活のメリットとして多くの人があげるのは、何をするにしても朝の時間は効率が良いということ。仕事のあとの疲れた身体と頭ではなかなか集中できないことも、睡眠によってリセットされた朝の身体で行えば集中できます。また、夜になにかをしようとすると、お付き合いやテレビなどの誘惑も多いものですが、早朝の時間帯なら邪魔されることもありません。朝活を実践している人によれば、朝の1時間は夜の何時間分にも匹敵するくらい使い出があるとか。もともと人間の身体は朝起きて夜は眠るようにできているのですから、自然のリズムに沿った朝活が快適なのは当然かもしれませんね。

my朝を、たのしむ

オフィス街の朝活として知られるのは、「丸の内朝大学」。東京の大手町・丸の内・有楽町地区全体をキャンパスに、朝7時台~8時台に開校する市民大学です。
「毎朝を意識的に、my朝に変化させてたのしく、充実した時間にすること」は「丸一日を、そしてくらしの全体を豊かにすごすきっかけに」なると、都市の朝型ライフスタイルを提案。「ちょっと早く電気を消して、翌朝に備えること。明るい時間を最大限活用して、暮らすこと。心に、体に、頭に効く学びや体験をすること。未来へつながる、あたらしい朝のかたちです」と書かれた公式サイトの文章には、朝のすごし方を変えることから社会を変えていこうという意気込みが感じられます。2009年の開講以来、のべ1万5千人以上の人が参加。自分磨きにとどまらず、環境問題や健康問題、地域振興などの社会的課題解決に向けた取り組みも盛んになってきているようです。

もうひとつの朝活

「朝活」というと、自己啓発やスキルアップなど「仕事に役立つこと」をするイメージもありますが、発案者自身が「一般的な朝活とは似て非なるもの」「むしろ朝活とは一緒にされたくない」と宣言している朝活もあります。「エクストリーム出社」と名付けられたそれは、出社前の朝の時間を「サラリーマンに残された"魅惑の領域"」ととらえ、朝のレジャーをとことん楽しもうという活動。エクストリームとは、英語で「過激な」もしくは「極端な」という意味で、発案者は普通の会社のサラリーマンです。
ストレスから出社拒否になりかけ、出社までの時間つぶしに勤務先と反対方向の電車に乗ったり街をうろついたりしていた体験をもとに、「早朝にレジャーを全力で楽しんでからする特別な出社」をエクストリームスポーツとして定義。「遅刻は失格」を唯一のルールに、「出社時刻」というタイムリミットを設けた上で、それまでの時間を集中して奔放に楽しむことを目的としています。
日本エクストリーム出社協会設立の1ヵ月後に開催された「全国一斉エクストリーム出社大会」には約200名が参加。多くの人が、早朝から活動することによるリフレッシュ効果を認めた結果といえるでしょう。

朝活は、よい睡眠から

とはいえ、朝活の時間を捻出するために睡眠時間を削るのでは、命を削るようなもの。大脳生理学者、久保田競博士は、その著書『あなたの脳が9割変わる! 超「朝活」法』久保田競(ダイヤモンド社)のなかで、脳科学的な見地から「朝スッキリとさわやかに目覚めるために、どうしても実行していただきたい大切な習慣」として、「朝だけでなく、前日の夜から朝にかけてのすごし方にも目を向けて」と訴えています。「前日の疲れを朝まで持ち越さない心地よい睡眠と、眠りへと誘う健やかな夜のすごし方こそ、"朝活"を超えた、超"朝活"のカギ」。生活のリズムそのものを健康的に整えた上で、はじめて朝活の効果もあがるということなのでしょう。

毎朝ラジオ体操に通う人、早朝散歩やジョギングをする人、早朝ジムに通って身体を鍛える人、語学学校の早朝レッスンや早朝セミナーで勉強をする人、好きな本を読む人、庭の手入れをする人、家族と一緒にゆっくり朝食をとる人…朝活という言葉を意識して周囲を見回すと、たくさんの実践者がいることに気づきます。その目的はさまざまですが、共通しているのは、朝の時間を自分のためにフルに活用していること。仕事だけが、学校だけが、人生ではない。多様な価値観の中で自分の時間を楽しむためのアクションが朝活であり、「楽しいことに時間を使おう」という決意のあらわれといえるかもしれません。
みなさんは、どんな朝活をしていらっしゃいますか?

研究テーマ
生活雑貨

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