記念日
ボーイフレンドが自分の作ったサラダをおいしいと言ってくれたから、その日を「サラダ記念日」と名付けたのは、歌人の俵万智さんでした。家族や自分の誕生日、プロポーズされた日、結婚記念日、子どもが初めて歩いた日、ペットが家に来た日、そして親しい人の命日や思いがけないアクシデントに見舞われた日などなど 嬉しいにつけ悲しいにつけ、人にはそれぞれの記念日があります。最近では、SNS上で友だちになった日を「友だち記念日」として、動画を配信するサービスも。今回は、そんな記念日について考えてみましょう。
どんな記念日に、何をする?
「記念日を大事にしている?」と訊ねたある調査(※)によると、77%の人が「はい」と答えていました。そして「どんな記念日」を大事にしているかという質問では、「自分以外の家族の誕生日」が1位で、回答者総数2004人中の1328人。以下、「結婚記念日」「自分の誕生日」「元日」「母の日」「親族の命日」
と続いています。
さらに、そんな記念日に何をするかを訊いたところ、1位は「ケーキやお菓子を買う」。2位以下は「プレゼントを贈る」「外食をする」「家族で集まる」「メールやLINEでメッセージを送る」「お祈りをする」「花を飾る」「手紙を送る」「写真を撮る」「ゆかりの場所に出かける」と続きます。
自分の誕生日より家族の誕生日を大事にする人の数が多いのを見てもわかるように、記念日には、自分のことだけでなく他者への想いが込められているのかもしれません。
※朝日新聞『be between 読者とつくる』2016.5.21(いずれも複数回答)
男性と女性の差
結婚記念日をすっかり忘れていて奥さんに叱られる男性─テレビドラマなどでよく目にする光景です。そもそも記念日とは、記憶にとどめておきたいという気持ちが込められたもの。特に結婚記念日などは夫婦の愛情を再確認する日ですから、それを忘れてしまっては奥さんの怒りを買っても仕方がないかもしれませんね。
仕事に追われてついうっかり、といったこともあるのでしょうが、どうやら記念日に対する想いには、男性と女性で差がありそう。「男性と女性では記憶をつかさどる脳の海馬に差があり、男性は日付まで覚えるのは苦手」という説もあるほどです。それならそれで、「つい、うっかり」を避けるためには、それなりの準備が必要。最近では、大切な記念日を登録しておくと、その日が近づいたことをメールで知らせてくれるリマインドサービスもありますので、そうしたものを活用するのも方法でしょう。
記念日は、絆を確認し合う日
ふだんは離れて暮らしていても、家族の誕生日を「記念日」としてみんなで集まり、一緒に食事をして絆を確認し合うという家族も多いようです。
一方、お正月やお盆、母の日、父の日といった年中行事が、そのまま記念日になっている人も。ある女性は、母の日に花束を抱えて電車に乗り実家の母の元へ行くのを恒例の行事にしているといいます。「母親が元気でいてくれて、会いに行けるという幸せ」をしみじみと噛みしめながら電車に揺られて行くのが、また幸せ感を増幅するのだとか。一般的な年中行事を超えて、その女性とお母さんとの間の特別な記念日になっているのでしょう。
また、母の日に花を贈る母親はもういないけれど、その花を自分の部屋に飾って亡き母を想う日にしているという人も。これもまた、その人だけの大切な記念日といえそうですね。
忘れてならないことを思い起こす日
日本人として、胸に刻み、その記憶を次世代へつないでいきたい記念日もあります。
たとえば、原爆記念日。終戦後70年以上たった今でも、被爆地の広島や長崎では原爆投下の時刻にサイレンが鳴り、道行く人々も立ち止まって黙祷を捧げるのがあたりまえの風景になっています。それは、この日のことが、決して忘れてはならない特別の日として語り継がれてきたから。そして被爆者の人たちが高齢化し、直接の体験者が少なくなってきた今でも、若い語り部を育てるべく地道な活動が続けられているからでしょう。
放っておくと、記憶は風化してしまいます。記憶を風化させることなく心にとどめ、それを伝えていくためには、努力も必要。原爆記念日にとどまらず、大震災やこのところ頻繁に起こる天災など、思い出したくない辛い経験も、記念日とすることで胸に刻み込まれ、思い起こされ、次の一歩を踏み出すためのよすがになるような気がします。
誕生日、結婚記念日といった万人共通の記念日だけでなく、人にはそれぞれの記念日があります。他人にとっては何の意味もないささやかなことでも、自分が大切にしたいと思ったら、その日は自分にとっての記念日になる。記念日は、大切なことをそのつど思い起こすためにあるのかもしれません。
みなさんは、どんな記念日を持ち、その日をどんなふうに過ごしていらっしゃいますか?