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年賀状を出しましたか?

今年も早いもので、残りあとわずかになりました。大掃除やお正月の準備などで忙しい日々をお過ごしかと思います。この慌ただしい年の瀬を、さらに慌ただしくしているもののひとつが、年賀状ではないでしょうか。最近では、煩わしさから年賀状を出すのをやめてしまう人もいると聞きます。SNSでつながっているから年賀状はいらない? とはいえ、やっぱり年始の挨拶は欠かせない? 平成最後の年の瀬に、年賀状について考えてみました。

年賀状の風習はいつ頃から

中国から伝来した「暦」が日本で使われるようになったのは、7世紀の初めだといわれています。それ以前はそもそも「新年」という概念がないので、年賀の挨拶もなかったように思われます。では、いつ頃から「年賀状」のようなものが取り交わされるようになったのでしょう。
逓信総合博物館が発行した「年賀状の歴史と話題」という冊子によると、平安時代後期の11世紀半ばに、漢文学の大家である藤原明衛(ふじわら あきひら)という人物が「雲州消息」という書物を著したそうです。これは「往来物(おうらいもの)」と呼ばれる書物の一種で、今でいえば「手紙文例集」のようなもの。貴族や僧侶の子どもは、この往来物を教科書にして、手紙の書き方を学んだようです。その「雲州消息」の中に、年始の挨拶を含む例文が数編収められているとのこと。少なくとも平安時代の後期には、すでに貴族などの上流階級の間で、年賀の書状のやりとりが行われていたと考えられています。

年賀はがきの登場

戦国や江戸の世にも、年賀の書状をやりとりする習慣はあったようですが、本格的に「年賀状」のようなものができるのは明治に入ってからです。ご存じのように、日本の郵便制度を創ったのは、旧幕臣の前島密(まえじま ひそか)という人。明治3年(1870年)に郵便事業の創業を建議して、明治5年には郵便の全国網を創り上げ、その翌年の明治6年には全国一律料金を確立しました。スタートからわずか3年で、今の郵便制度の基盤を築いてしまったのです。「郵便はがき」が初めて登場したのも同じ明治6年のこと。ヨーロッパで世界初の郵便はがきが誕生してからわずか4年後のことです。明治維新の改革のスピードがいかに速かったかがうかがえますね。この簡便な「郵便はがき」の誕生が、その後、日本の伝統文化として発展する「年賀状」の風習につながっていくのです。

年賀状の空白期

明治から大正の時代にかけて、日本人の間ですっかり定着した「年賀状」の風習ですが、実は一度だけやりとりが停止した「空白の時期」がありました。それはいうまでもなく、第二次世界大戦の最中です。日華事変が起きた昭和12年(1937年)11月、紙の消費節約と国家資源確保という名目から、年賀状停止の申し合わせが閣議決定されます。国家の存亡をかけただいじな時期に、新年を祝うとは何事かということなのでしょうか。年賀切手の発行も昭和13年を最後に中止されてしまいます。ただし、戦後すぐの昭和21年には、さっそく「年賀特別取扱」の制度が復活します。戦争で離ればなれになった人の安否を確かめる意味もあったのでしょうが、日本人がいかに年始の挨拶を大切にしていたかがうかがえるエピソードです。

年賀状の盛衰

郵政省の「年賀はがき」が復活したのは「昭和25年用」のものからで、当初は1億8千万枚が発行されたそうです。以後、枚数はうなぎのぼりに増大し、オリンピックが開かれた昭和39年には10億枚を突破。オイルショックが起きた昭和48年には20億枚に達し、家庭で簡単に印刷できる「プリントごっこ」の登場などもあって、平成15年(2003年)にはついに44億5千万枚を超え、年賀状の発行枚数はピークを迎えます。
しかし、この頃からすでに衰退の兆しは見えていました。1990年代にはパソコンの電子メールが普及しはじめ、携帯電話によるメールも一般化してきます。2000年代後半になるとスマートフォンが登場し、フェイスブック、ツイッター、ライン等のSNSがコミュニケーションツールの主役になってきました。それと同時に、年賀はがきの発行枚数も右肩下がりになり、今回「平成31年用」の年賀はがきの発行枚数は24億枚と、ついにピーク時の半分近くまで落ち込んでいます。実際に、「大切な人とはフェイスブックでつながっているので、年賀状は要らない」といって、出すのを止めてしまった知人もいます。年賀状の行く末はどうなっていくのでしょうか。

もっとも、なんでもデジタル化されてしまう時代だからこそ、年賀状のアナログ的なやり取りに魅力を感じるという人もいます。年に一度、正月ぐらいはゆったりした気持ちで、郵便受けに届く色とりどりの賀状を眺めながら、遠方の友や親戚に思いを馳せたいというのです。
煩わしいから年賀状はもう要らない? いやいや日本人として、それくらいの情緒は持ち合わせていたいもの?
もうすぐ平成最後の新年が明けます。今年、あなたは年賀状を出しましたか?

参考資料:「年賀状の歴史と話題」(平成8年11月 逓信総合博物館発行)

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