研究テーマ

わが家の「防災計画」を立てませんか

四方を海に囲まれ、中央に高い山があり、火山も多い日本は、世界でも有数の災害大国です。この立地と地形ゆえに、日本は過去に台風や集中豪雨、豪雪、地震、津波、噴火など、さまざまな災害に見舞われてきました。もちろん国や自治体の防災対策もだいじですが、いざというときに頼りになるのは、やっぱり自分の知恵と力ではないでしょうか。災害発生時にどんな行動を取るかで、人の運命は分かれます。今回は、家族みんなで災害に備えることの大切さについて考えてみました。

大災害が多発した2018年

振り返れば去年、2018年は本当に災害の多い年でした。6月には大阪府で最大震度6弱を記録した「大阪府北部地震」が発生。7月には「西日本豪雨」の記録的な大雨で200名以上の人が亡くなりました。9月上旬には猛烈に発達した「台風21号」が近畿地方を直撃。同じ頃、北海道で最大震度7を記録した「北海道胆振東部地震」が発生し、液状化や大規模な停電が起きました。また、酷暑もひどく、夏(6月~8月)の平均気温は東日本で平年比+1.7℃となり、統計開始以来最も暑い夏になりました。まさに日本の全土が満身創痍になった年といえます。
ところで、去年だけが例外的に災害が多かったのでしょうか。専門家の意見を聞くと、どうやらそうでもなさそうです。このところ多発する気象災害は地球温暖化と無縁ではなく、今後はさらに強い台風や大規模な豪雨の発生が予想されています。また、京都大学教授の鎌田浩毅さんは、東日本大震災によって「日本の地面は東西に5mほど引き延ばされ、それが元に戻っていく過程で、いま地震や火山の噴火が増えています」と言っています。いつどこでふたたび大地震や噴火が起きるか分からない状態にあるのです。

逃げ遅れの原因は?

去年の「西日本豪雨」で問題になったことの一つが「逃げ遅れ」でした。自治体が避難勧告や指示を出したにもかかわらず、避難せずに亡くなられた方が多かったのです。理由として考えられるのが「正常性バイアス」という人の心理。危険が目前に迫っているのに、なぜか「自分は大丈夫」と思い込んでしまうのです。氷山にぶつかって沈没した「タイタニック号」の場合もそうですが、浸水が始まっているのに「タイタニックは沈むはずがない」と、よい方に勝手に解釈して逃げ遅れてしまうのです。
もう一つは、避難勧告や指示を出すタイミングです。広島市では平成26年に土砂災害で77人が亡くなったこともあり、早めに避難勧告を出すようにしていました。しかし、用心して早めに避難を呼びかけるあまり、空振りになるケースが増えていたのです。今回の豪雨で被災したある人は、「今まで何度も避難勧告が出て、避難しなくても大丈夫だったので、今回も大丈夫だと思った」と語ったそうです。実際、昨年の「西日本豪雨」で広島市は217万人に避難勧告や指示を出しましたが、避難所への避難が確認されたのは1万7千人あまりで、全体のわずか0.8%にすぎませんでした。早め早めの対策が裏目に出たようで、避難勧告や指示を出すタイミングの難しさがあらためて浮き彫りにされました。

家族で話し合うことの大切さ

国や自治体は災害による被害を最小に抑えるために、さまざまな施策を講じています。でも、それはあくまでも大勢の人間を対象にしたもので、個々人のケースに当てはまるとは限りません。たとえば、自宅の立地によって災害の危険性は大きく変わります。海のそばか、河川の近くか、崖くずれのしやすい場所か、液状化しやすい土地か。自分が住んでいる地域がどれくらい危険な場所かを、まずは把握しておくことが大切だと思います。身に迫る危険を察知して、「いつ、どのタイミングで、どこに避難するか」を最終的に判断するのは自分自身だからです。
今はほとんどの自治体が、災害に対する危険性を示した「ハザードマップ」という地図を出しています。それを入手して、家族みんなで話し合い、防災や避難の計画を立てておくといいかもしれません。「うちの場所に津波は来るのか」「崖崩れの心配はないか」「近くの河川が氾濫した場合、何メートルぐらい浸水するか」など、災害を"自分ごと"として捉え、わが家専用の「防災計画」を立てておくのです。「備えあれば憂いなし」で、いざというときの判断や行動に必ず役立つと思います。

「災害は忘れたころにやってくる」といいますが、忘れる暇もないぐらい次々と災害が襲ってくる時代になりました。「地震に備えて家具は固定してあるか」「懐中電灯やろうそく、ラジオなどの備えはあるか」「飲料水や食料は何日分ぐらいストックしているか」「調理用のカセットコンロ、携帯用トイレはあるか」など。今一度、家の中を見まわして、災害への備えを点検してみてはいかがでしょうか。

無印良品でも「わたしの備え。いつものもしも。」という、ふだん使いできるモノを防災用品として提案する取り組みを行っています。また、「わたしの備え。いつものもしも。七日間を生き延びよう。」という防災知識をコンパクトにまとめたパンフレットも配布しています。東日本大震災が起きてからまもなく8年になります。多発する災害から身を守るために、わが家の「防災計画」を立ててみてはいかがですか?

[関連サイト]
無印良品 特集「わたしの備え。いつものもしも。」
「わたしの備え。いつものもしも。七日間を生き延びよう。」(PDF版)

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生活雑貨

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