1982年 ゴキブリ取り
存在を主張しない。
赤い屋根の下に、窓があって、ドアがあって...ゴキブリ取りの多くには、家の絵が描かれています。「ゴキブリは、箱の絵を見て入ってくるのだろうか?」こんな笑い話のような疑問から、商品づくりが始まりました。
ゴキブリが「家に入ってくる」というのは、なるほどアイデアですし、その絵柄は販売店の店頭やCMではよく目立つでしょう。でも、実際に家で使うときには、あまり目立ってほしくないもののはず。ゴキブリも、家の絵ではなくニオイで近づいてくるのだとわかれば、なおさらです。
こうした考えから、無地のクラフト紙の表情をそのまま生かした、シンプルで目立たないゴキブリ取りが生まれました。
「目立たせない」ためには、サイズもポイントです。流し台下などのすき間にすっきり収まれば、邪魔にならず目障りにもならないはず。そこで、箱の幅を市販品の3分の2に。印刷工程を省き、スリムにしたことで、コストも下げることができました。
存在を主張しないこのゴキブリ取りは、都市部を中心にヒット商品に。「ゴキブリも感心によく入ってきます」との声が数多く寄せられ、機能の面でも満足していただけました。
マイナスすることで、プラスの価値を生み出すこともできる。掘り下げた平凡は、非凡になる。この商品づくりで学んだ新しい視点は、その後のさまざまな商品に生かされていきます。