1980年 鮭水煮
「常識」を見直す。
「しゃけは全身しゃけなんだ。」ポスターアーカイブでもご紹介した、鮭水煮の広告のキャッチフレーズです。コピーの下には、胴体のところだけ切り取られた鮭のイラスト。まるで、鮭が怒って抗議しているようにも見えます。
その当時、鮭の缶詰は、形が揃った胴体の部分だけを輪切りにしてつくるのが「常識」でした。頭やしっぽのまわりにもおいしい身がついていますが、フレーク状になるので使われません。見映えをよくするために、使える部分が捨てられていたのです。
チャーハン、サラダ、混ぜ寿司、炊き込みご飯、和え物......薄味で身が柔らかく旨みも栄養もある鮭の水煮缶詰は、おいしさと手軽さで、いろいろな料理に幅広く使われます。そして、よくよく考えてみると、実際には「ほぐして」使うことの方が多いようです。
そこで、製造時にほぐして、フレーク状で販売することにしました。これなら、フレーク状になるからという理由で捨てられていた部分も活かせますし、コストダウンにもつながります。もちろん、不揃いでもおいしさに変わりはありません。
体裁にとらわれることなく、素材を無駄なく使う。実用を重視して、無駄な選別をしない。この缶詰で培われたものづくりの考え方は、その後の無印良品の指針になり、多くの商品の開発につながっていきました。