2000年 壁掛式CDプレーヤー
人間を観察する。
目の前にひもがぶら下がっていたら、思わず、それを引っ張ってみたくなる──人間には、ものとの関係の中で自然に出てくる行動があるようです。
換気扇のような形をしたこの壁掛け式CDプレーヤーも、人間が無意識にやってしまう行動原理を観察することから生まれました。思わずひもを引くと、風ではなく音楽が流れてくる。そんな意外性と操作の手軽さもあって、多くの人に愛され、無印良品のアイコンとも言える商品になりました。
日本型の換気扇を知らない海外でも、評判は上々。何かの原型から導きだされたデザインは、見る人や使う人の記憶に訴えかける力を持っているのかもしれません。
これを機に、無印良品のものづくりは、デザインの本質に迫っていく方向へ向かいます。それは、ものと人との関係を発見していこうという試みとも言えます。人がものと関わる時にどう行動するのかを、注意深く観察することが始まりました。また、この頃から、デザインとは何かという根源的な問題に視点を置き、多くの海外のデザイナー達とも接点を持ち始めました。
生活雑貨や家具などの商品群が大きく広がっていくための転機をつくった商品、それがこのCDプレーヤーなのです。
※この商品は、深澤直人氏が「without thought」というプロジェクトで考えたものを、無印良品が商品化したものです。その後、深澤氏は無印良品のプロダクトデザインのアドバイザリーボードとなり、現在も多くの商品を監修しています。