研究テーマ

生物多様性ってなんだろう?

2010年10月、名古屋にて「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が開催されました。「生物多様性ってなんだろう?」という素朴な疑問から、約100カ国で活動している環境保全団体WWFの日本支部である、WWFジャパンにお邪魔して、広報担当の佐久間浩子さんにインタビューでお答えいただきました。

Q 生物多様性ってそもそもどういうことなのでしょうか?

creature101111_img01.jpg
例えば「自然を守ろう」という言葉を聞いた時、「自然」という言葉は概念があまりにも広すぎて、思い浮かべるものは人それぞれです。WWFは長年「絶滅危惧種」にスポットライトを当て、自然保護を訴えてきましたが、「絶滅危惧種」はサインを出してくれる象徴的な存在であるに過ぎず、本当に大切なのはその背景にある生態系なのです。多様な生物からなる「生態系」を「生物多様性」という言葉で表しているのです。

私自身、生物多様性の重要さを知った象徴的なできごとがあります。長良川河口堰が建設される際に、絶滅危惧種であるサツキマスが産卵時に川を上れるように魚道をつくることが発表されました。そのとき、ある研究者の方から「その魚道はゴカイも上れるのでしょうか」という質問があがりました。ゴカイとはサツキマスのえさになる生物で、実はゴカイも産卵のために川を上る性質があるというのです。そのとき、初めてゴカイについて知った人が大半でした。つまり、人間の配慮には限界があるのです。

自然界にはまだわかっていないことがたくさんあり、目に見えないものが私たちの生活を支えているのです。「生物多様性」という言葉には、「わからないことがある中で目に見えないものをいかに守っていくか」という意義が含まれているのです。

Q 今、なぜ「生物多様性」なのでしょうか?

creature101111_img02.gif
WWFジャパンでは、COP10開催を機に「One Planet Lifestyle」という小冊子を作成しました。魔法のりんごに住んでいるアオムシくん。食べても食べてもりんごは元にもどるので、どんどんりんごを食べて大きくなりました。ある日、なんとなくりんごが穴だらけになっていることに気づきます。でも、アオムシくんは「大丈夫、りんごは元にもどるから」と、りんごを食べ続けるというお話です。実は魔法のりんごが元に戻る量には限界があるのですが、アオムシくんはそれに気づいておらず、元に戻っていた経験を信じて行動を変えようとしないのです。まさに私たち自身がこのアオムシくんなのです。日本は非常に自然に恵まれた国ですが、世界の国々は必ずしもそのような状態にはないことを自覚し、地球全体で物事を考えていかなければ、いつかその自然を奪われてしまう可能性もないとはいえないのです。

Q 私たち一人ひとりができることは?


環境、生態系を守るのには、それなりのコストが発生します。そのコストをきちんと含んでいる商品のほうが安心であると思います。モノを消費するときに「安い」という理由だけで選ぶのではなく、「安心」という視点で選ぶことが大切だと思っています。
また、企業の皆様にはぜひ、本業で「サステナブル(持続できる)」を実現していただきたいと思います。本業とは関係のないところで、自然保護活動をすることももちろん良いことなのですが、やはり「餅は餅屋」。企業の活動はその企業の方々が一番ご存知だと思います。その企業でないと考えられない、本業での「持続的可能な取組み」をしていただきたいと思っています。

インタビューを終えて

佐久間さんのお話はとてもわかりやすく、無印良品がこれまで取り組んできた「モノ」による社会への貢献ということを今後も深めていかなくてはならないと強く感じました。
生物多様性と最も密接にかかわる企業活動として、私たち無印良品は新潟県津南町、岐阜県高山市、群馬県嬬恋村に3つのキャンプ場を運営することで、合計70万坪の森林を管理しています。また、商品では、クリスマスギフトとして、絶滅危惧種をかたどった積み木を11月に発売します。
ネットストアにて販売しています。

絶滅動物 IN A BAG 木製はこちら[ネットストア]