研究テーマ

ミツバチから学ぶ自然

TOP対談で当社の社長金井と対談をしていただいたイースクエア会長の木内さん。現在、自宅でニホンミツバチを飼い、「ハチさん」から様々なことを学んでいるというお話が対談の中でも出てきました。もう少し、「ハチさん」について知りたいという思いから、木内さんにお願いし、2011年1月末にご自宅の養蜂箱を覗かせていただきました。養蜂の先生である銀座ミツバチプロジェクトの山本なお子さんにもご参加いただきました。

きっかけはGINPACHI

銀座ミツバチプロジェクト(通称GINPACHI)をご存知ですか? 『銀座ミツバチプロジェクト』は、食についてのシンポジウムを開催してきた「銀座食学塾」と、銀座の街の歴史や文化を学んできた「銀座の街研究会」の有志たちを中心に集まり、銀座3丁目紙パルプ会館屋上でミツバチを飼っている特定非営利活動法人です。プロジェクトの目的はミツバチの飼育を通じて、銀座の環境と生態系を感じるとともに、採れたハチミツ等を用いて銀座の街との共生を感じること。2006年春から始まったこのプロジェクトに興味を持った木内さんは2010年春、5,000匹のニホンミツバチを譲り受け、ご自宅で養蜂を始めました。今では3万匹に増えたとのこと。「とにかく、ニホンミツバチがいいんですよ」という木内さん。今では奥様と共に「ハチさん」を通して、季節や環境の移り変わりを細やかに感じていらっしゃいます。

養蜂は畜産

山本さん曰く、「セイヨウミツバチは家畜なので、飼うには手続きが必要です。また、セイヨウミツバチに限らず、ご自宅(特に都心)で飼う場合は、専門家の指導を受けることをお勧めします」とのこと。養蜂が現在のように発展したのは、世界でも巣箱が開発された1800年半ば以降で、日本では明治初期以降に西洋ミツバチが導入されてからとのこと。アフリカやヨーロッパ原産のセイヨウミツバチは収蜜力が強い上、花が咲くと集中的にその蜜を集めるため、「○○のハチミツ」というように単一の蜜が取れやすいそうです。一方、ニホンミツバチはもともと木の洞(うろ)などに住んでいたので、日陰を好み、とてもデリケート。
「嫌な場所には住まず、すぐに巣を移動してしまいます。セイヨウミツバチとは違い、穏やかな性質で気ままに花の蜜を集めてくるため、百花蜜(様々な種類の花の蜜)になりやすいんです」と山本さん。環境に敏感なニホンミツバチだから、木内さんご夫妻が愛されるのだなと納得しました。そして、最近ではニホンミツバチの現代式巣箱も開発され、飼いやすくなったとのことです。

ミツバチで感じる自然

「ミツバチは冬眠をしませんが、冬は巣の中で発熱しながら寒さをしのぎます」といって山本さんが巣箱からミツバチを取り出してくれました。子ども(幼虫やさなぎ)たちを寒さから守るために全員で必死に羽を動かして発熱している蜂たちを触わってみると、ほのかに温かさが伝わってきます。この寒い冬に「ハチさんを見せてください!」と、のんきにお願いしたこと自体が自然を知らなかったと恥ずかしくなりました。ニホンミツバチと暮らし始めた木内さん。「今日は雨がたくさん降っているけどハチさんは大丈夫かな」、「近所に花が咲いたけれど、その蜜が運ばれているのかな」と、ミツバチを通して周辺の環境を感じるようになったそうです。この日も近所の公園に咲く椿の蜜の様子を山本さんと共にチェック。
「海外ではハチミツは貴重な糖分として生活に密着しています。日本ではミツバチ=虫=汚いとか、刺すから危険と思う方もいらっしゃいます。ミツバチが蜜を集めることで、様々な植物が受粉し、生命をつなげています。GINPACHIの活動を通じてミツバチのことを考え、生態系のことを考えるきっかけになってくれればと思います」という山本さん。わたしたちもまた1つ、自然に学んだ日になりました。

取材を終えて

ミツバチはFUKU-FUKUプロジェクトのシンボルでもあります。そんなご縁を感じつつ、楽しく取材をさせていただきました。「どんなことも、家庭の理解と支援がなければ成功しない」とおっしゃる木内さん。世の中を変える力は、家庭、そして日々の「くらし」から生まれるものであるということを、透明な椿の蜜の甘さや、ハチさんのぬくもりが、やさしく教えてくれました。