研究テーマ

社会貢献を知ろう!「良品計画社員と学ぶ寄付先団体の活動」第7回 ジャパン・プラットフォーム×良品計画 ~9月1日は防災の日~ 3.11を受けて、災害と、その備えについて考える。

どんな食べもので、備えますか?

清水: 日本が災害大国であるならば、モノづくりに防災の視点を取り入れることは必然であるはずだと、私たちは考えました。結果、防災を日常生活に取り入れることにも行き着いたわけですが、そこではモノづくりだけではないアイディアも出てきました。さっき、銀色のリュックはリビングに置いておきたくないという話をしましたが、非常食の代名詞でもある乾パン、あれは普段は食べないですよね。

椎名さん: 食べませんね。先ほどの話で言えば、乾パンは、リビングはもちろん、キッチンに置いておいても場所を取りますし、あれもしまい込んでしまいがちですね。

清水: はい。それもあるのですが、非常時だって、できれば美味しいものを食べたいじゃないですか。だから、乾パンで備えてもいいけれど、それを、自分の好きなレトルトの食品なんかに置き換えて、普段から多めにストックしておくのも一案じゃないかなと。いつも一定量を確保しながら順ぐり消費していくんです。そうすれば、日々のごはんにも便利で、キャンプなんかのときにも重宝するし。無印良品のレトルト食品、美味しくて評判なんですよ。ふたりして、手前味噌でPRしちゃいましたけど(笑)。

椎名さん: 3.11以前から考えて来た、というのが、なおさら感心させられます。普段使っているものが防災グッズを兼ねているほうが合理的ですもんね。それに、食べ物に関して言えば、おっしゃる通りなんですよ。被災した直後、何とか生き延びることにがんばっている間は、非常食でもいいのですが、少し経つと、美味しいものが食べたくなります。当たり前ですよね。温かいものを食べるだけで、ほっとしたり、力が出ると言う被災者の方の声は実感がこもっています。

ボランティアの受け入れを前提に、防災計画を立ててはどうでしょう

清水: これは無印の商品とは関係ないのですが、もうひとつ考えたことがあります。阪神・淡路のときもそうだったように、東日本大震災でも、ボランティア希望者がたくさんいましたよね。日本でも、こうした有事にボランティアが集まることは証明されたと思います。だったら、国なり自治体なりの防災計画にも、万一のときにボランティアをどう受け入れて、どうやって効率的に動いてもらうのか、予め織り込んでおくべきじゃないかと。それもまた"備え"ですよね。混乱の中での難しさはありますが、助けが必要なのは明らかなのに、受け入れ体制ができていないからお願いできない、というのはもったいない。

椎名さん: 阪神・淡路の震災の被災者からのご意見として、「一番頼りになったのは自衛隊の人たち、一番頼りにならなかったのはボランティア」というのがあったんですね。もちろん、一概には言えませんが、被災地で水も食べ物もインフラも整わない中で、やってきたボランティアがそれを消費したり、最悪の場合、被災者側が逆にボランティアの食べものや寝る場所のケアをしなくてはいけないこともあって・・・。

清水: みんな善意で被災地に赴いているので、不幸なことですよね。

椎名さん: はい。阪神・淡路のときのことを聞いていたので、東日本では、私たちもボランティアの受け入れに慎重になりました。そして、ボランティアは自己完結しなければならないと繰り返し言いました。言い過ぎてしまったせいか、じきにボランティアが足りなくなって・・・。ちょっと反省しています。確かに、受け入れ側で体制を練っておけば、ずいぶん違うと思いますね。ボランティアが必要か否か、というと、間違いなく必要なので。

高橋: 考えさせられますね。

椎名さん: その点、欧米の人は、ボランティアする側も、受け入れる側も、心得ているというか、自然だというか。私たちも学ぶところが多いです。

「地域コミュニティ」は、防災上も、とても重要です。

高橋: 助け合いという意味では、地域コミュニティ、これも大事ですよね。防犯上もですが、防災上も、地域の結びつきの強さがものをいうと言いますし、実際にそうだと思います。

椎名さん: 今、欧米はボランティアが進んでいるという話をしましたが、地域コミュニティという点においては、むしろ途上国にもポテンシャルを感じます。日ごろから、村単位などで結びつきが強いことがあるので、いざというときもまとまりがあります。どこの誰が目が不自由だとか、足が悪いとか、みんな知っていますし、あそこの川は何十年前に氾濫した、どこに逃げたら安全だ、などという情報も共有されていることも多いようです。助けが必要な場合も、こういう場合は、どこそこの誰それを呼べばいい、と、すぐに判断できます。ソフト面でいうならば、コミュニティが最も力強い防災になるのではないかと思います。

清水: 私たちのような都会暮らしと比べ、3.11で被災した東北では、まだそうしたコミュニティが残っているのではないでしょうか。被災者が避難する過程で、地域がバラバラになるのが問題視されています。地域の人と人とのつながりは、無形の財産ですもんね。

椎名さん: その通りですね。

清水: 一言で防災と言っても、ハード面、ソフト面、まだまだ考えなくてはいけないことがありますね。家での防災、職場での防災、外出時の防災、それぞれ異なりますし。これからも、主に商品を通して、気づきのようなものを提案できればと思います。

対談を終えて

清水: 私は長く商品開発を担当してきました。ずっとモノに関わっていると、モノの限界が見えてきて、かえって、モノだけじゃない。と思うようになるものです。今日も、「コミュニティが最も力強い防災」という言葉が突き刺さりました。考えてみたら、自分自身、住んでいる地域では、特にどのコミュニティにも属していないんです。にわかに不安になりました。モノでしっかり備えるのと同時に、野球チームでも、釣り堀でも(笑)、何か自分が一員となれるコミュニティを見つけようと思います。

高橋: 外部の方を交え、改めて防災についてお話しできたことで、視点が広がりました。大きな災害が発生した際にボランティアを受け入れる前提で防災計画を、という話題が出ましたよね。同じ考え方で、しばしば避難所として利用される学校を、最初からその前提で設計したらどうかな、とか、いろいろアイディアめいたものもわいてきます。そうやって考えていくと、防災のための環境整備にも、もっとやれることがある気がしてきました。また、自分の持ち場でも頑張ります。

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