研究テーマ

社会貢献を知ろう!「良品計画社員と学ぶ寄付先団体の活動」第10回

「今がすべて」が、子どもの世界観

赤峰: 子どもって、「これは人生の中で一時のことなんだ」と考えることができませんよね。大人になって振り返れば、ほんの一瞬のことだけど、そうは思えない。辛いことだと思います。

太田さん: 子どもにとっては、今がすべてですよね。今の世界、今の人間関係がすべて。そこでうまくいかないと、「自分なんか嫌いだ」、最悪の場合、「生きていても仕方がない」と言いますからね。

赤峰: 私は、娘が人間関係で辛い状況におちいった時、「これは一時のことだし、ここ以外の世界もある。あなたは間違ってないし、今の状況だけに合わせて自分を曲げることはない」と言ったことがあります。実際、卒業して進学した学校では、それまでのことがうそのようにうまくいきました。

高野: そう考えると子どもって大変ですよね。大人だと、合わない人とは付き合わないとか、どうしても職場が合わなければ転職しようとか、趣味で別の世界を持ってストレス解消するとか、対応できなくはないですからね。子どもは与えられた環境を自力で変えることが極めて難しい。学校と家庭が世界のすべてなのに、そこでうまくいかないと、逃げ場がないですよね。

赤峰: 本当ですね。逃げ場がなくて、自分を開放もできずに思春期を迎えて、ネットだけが自分の居場所と思うようになって引きこもって・・・とか、今の世の中、怖いですよね。実社会を知らないのに、社会に対する不信感ばかりが膨らみやすい気がします。

太田さん: 引きこもりもですが、夜の街に出て、そこを居場所だと思う子もいます。夜の街には、やさしく声をかけてくれるお兄さんやお姉さんがいて、そこでは自分が認められたように思ってしまう。とても危険なことです。

貧しくて悩む子ども、豊かでも悩む子ども

高野: 辛いお話に追い打ちをかけるようですが、ここ数年、子どもの貧困が問題になっていますね。気になっているのですが、その影響はお感じになりますか。

太田さん: 3年ほど前から、貧困を背景にした悩みの電話がかかってくるようになりました。「うちは貧乏だから」と、子どものころから"負け組"を意識しています。

赤峰: 母子家庭はとくに貧困の割合が高いですし、両親がいても、収入の関係で母親が夜の仕事をしていたりすると、子どもと向き合う余裕が、時間的にも精神的にもなくなってしまいますよね。

高野: 親としては、経済的な理由で、子どものやりたいことを諦めさせるのは非常に辛いことですが、ひとり親家庭だと、その思いで必死で働くことで、子どもとの距離が開いてしまう。どうしたら良いのでしょうか。

太田さん: 本当なら、地域のつながりがあるといいんですよね。昔はありましたから。家庭が貧しくても、周りの大人が集まれば、知恵で解決できることもあるんですよ。進学を諦めなくても、奨学金を申し込んでみよう、とか。チャイルドラインじゃないですが、周りの大人が話を聞いてあげるだけでも、子どもにとっては救いになるんです。

赤峰: そうですよね。意外と見落としがちなポイントですが、地域で、母親同士、父親同士が仲が良いと、子ども同士の関係もうまくいきやすいですよ。

高野: 確かにそうですね。親として意識したい点のひとつですね。

太田さん: 格差社会と言われる中で、子どもの貧困問題は本当に深刻です。貧困が、学力や、健康に影響することは否めません。ただし、子どもの問題に関して言えば、貧困が諸悪の根源で、裕福になりさえすれば問題が解決するなどということは決してありません。溢れんばかりのモノを与えられて何不自由ないようでも、挫折感を味わっている子どもだってたくさんいるのですから。

高野: ありったけの教材を買ってもらい、数々の習い事を身に着けさせ、名門の学習塾に入れてもらえば、子どもは子どもなりに、親が自分にお金をかけていることを理解しますからね。親の期待に応えようと頑張るのに結果が出ないと挫けますよ。

赤峰: 挫けますね。中学で偏差値が高くて、高校で進学校に入ったら、みんなが優秀なのでそれまでのように抜きん出ることができなかった、というだけでも受け止め方によっては挫折ですよ。親は、子どもが優秀であればあるほど、大きな夢をかけてしまうでしょう。プレッシャーですよ。

高野: やはり根本的には、親や大人たちの子どもへの関わり方の問題ですよね。それにしてもいろいろと考えさせられます。

必要なのは自己肯定感

太田さん: 結局、人が生きる上での強さを支えるものは、自己肯定感だと思うんですね。自己肯定感というのは、積み重ねで育ちますから、子どものした良いことには、ほめたり、お礼を言ってほしい。悪いことをしても、どうしてしたのか、どんな気持ちでしたのか、その理由を知ろうとしてほしい。子どものSOSを逃さないようにだけは気をつけてもらいたいですし、「どんなあなたでも、決して見捨てない」という気持ちを伝えてほしいです。

赤峰: 今日は子どもの人権についてがテーマですが、つくづく、大人が何とかしないと守れないと思いますね。

高野: チャイルドラインのホームページで、子どもの権利条約について、子どもに向けた記述を見ました。子どもの権利を簡単に言えば、「元気で暮らせて、おいしくごはんが食べられることや、遊んだり、休んだり、わからないことを教えてもらうこと。誰かにいやな思いをさせられたりしないこと、自分の考えていることを言えること」というようなことが書いてありました。当たり前のことのようですが、その環境づくりをするのはやはり大人ですもんね。

太田さん: そうですね。そしてその中心になるのは、やはり親なんだと思います。学校の先生は一人で何十人という子どもをみています。子どもは辛いとき、自分だけをみてほしいし、自分をわかってほしい。その子ととことん向き合う役目を果たせるのは、どう考えても親ですよね。その上で、それができない事情がその家庭にあるとわかっているのであれば、そのときは、ほかの大人に出て行ってほしい。そういう社会でなくてはいけません。我が子だけの幸せを願っていくと、我が子の幸せも守れなくなります。なぜなら、どんな親でも、四六時中、一生子どもと共にいてあげることなんてできないですからね。子どもも必ず、親以外の誰かと関わり合い、関係を育みながら生きていくんです。自分さえ良ければ、自分の子どもさえ良ければ、という論理は必ず破たんします。

赤峰: なんというか、とても勉強になりました。地域社会のこと、それから、子どもをほめてあげることの大切さは、私にも思い当ることがあるので、改めて、胸に刻みます。

太田さん: ほめることの大切さに、ひとつ付け加えますと、日本の男性は苦手なようですが、奥さんをほめることも大事なんですよ!まずはお母さんが自己肯定できなくては。お母さんが輝いていると、必ず子どもに良い影響がありますからね。お母さんに限らず、子育てしているお父さんも同じですけれど。

高野: それは確かに・・・。心がけます!

対談を終えて

高野: 私はこれまで、チャイルドラインの活動を知りませんでした。今は、より多くの人たち、子どもたちに、活動を知ってもらいたいと願っています。チャイルドラインの電話が、居場所となり、拠り所となることで、救われる子どもがいるというのが現実がある以上、私たち大人が、この活動を支えていかなければなりませんね。一方で、そんなチャイルドラインの役目を、家庭や学校はもちろん、地域で担える社会をつくっていけないものかと、強く感じる時間でもありました。

赤峰: 最後に、「子どもやお母さんを、ほめることが大事」というお話が出ましたね。私の場合、それをしてくれたのは、お姑さんです。彼女は長年保育士をやっていたので、子育てのプロとも言えますが、とてもほめ上手なんです。うわべのお世辞ではなく、存在を肯定してくれて、その気にさせてくれます。まさに、「自己肯定感」ですよね。私の場合は大人になってからでしたが、彼女に出会って人生が変わりました。自分もそういう存在になりたいと、今日は改めて感じました。

チャイルドラインは、2011年11月24日から2012年2月23日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
114人の方から合計43,200円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。
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