社会貢献を知ろう!「良品計画社員と学ぶ寄付先団体の活動」第25回
募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第25回は、主に女性や子どもを対象にした、「人身取引」をなくすことを目的に活動する、ポラリスプロジェクトジャパンさんに、お話しをお聞きしました。
- 「人身取引」は、日本でもまん延している
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人身取引(トラフィッキング)は、麻薬取引に次ぐ世界第2の犯罪産業といわれています。この犯罪は、政情の安定しない国や、貧困にあえぐ国の中だけで起きているわけではありません。女性や子どもが標的になりやすい商業的性的搾取をはじめ、日本でも横行しています。3月8日は国連の定める「国際女性の日(国際女性デー)」。国際社会から取り組みの遅れが指摘され続けているにもかかわらず、国内では耳慣れない、日本での人身取引について、ご一緒に考えてみましょう。
プロフィール
ポラリスプロジェクトジャパン
2000年の米国のポラリスプロジェクト設立の2年後に、人身取引問題を専門にする日本で唯一の団体として活動をスタートしました。ほかの先進国に比べて取り組みが遅く、国際社会からもたびたび指摘を受ける日本の状況を改善するため、警察や行政などと連携しながら奮闘しています。
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藤原志帆子さん
ポラリスプロジェクトジャパン
代表米国NPOポラリスプロジェクトでの勤務を経て、2004年に同団体日本事務所を設立。強制売春やポルノ等、性的搾取を目的とした人身取引をなくすために、多言語の相談電話による被害の発見と救済事業を開始。人身取引被害を受ける子どもや女性への現場での支援の傍ら、児童施設や学校教員向けの研修講師としても活動している。
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鈴木美智子
良品計画
食品部 菓子担当マネージャー1992年、入社。無印良品青山に配属後、1993年に衣服雑貨部へ異動となり、服飾雑貨、靴、バッグの商品開発を担当。2002年、再び店舗勤務となり、ルミネ大宮、ルミネ新宿など3店舗での店長と有楽町での副店長を経験後、2010年より、現職。菓子全般の商品開発と数値計画を担当。
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窪真弓
良品計画
衣服・雑貨部 インナー担当2002年、入社。無印良品池袋西武へ配属後、新宿、本川越、目黒などで店舗スタッフ、店長を経て、2008年より衣服雑貨部へ配属。数値管理担当や、服飾雑貨のMD(マーチャンダイジング)開発担当を経て、2011年より現職。主に、婦人肌着やパジャマ、ホームウェアの開発を担当。
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「人身取引」が日本の問題だったとは
鈴木:実は、「人身取引」と最初に聞いたとき、「奴隷のこと?」と思ってしまいました・・・。
窪:まさに、私も同じです。
藤原さん:驚かれる方が多いのですが、現代の、それも日本で起きていることです。言葉の定義として、認識が異なるということもありますが、一度起きていることの内容を目の当たりにすると、皆さん納得されます。
鈴木:はい、ポラリスさんのウェブサイトを拝見して、「なるほど、そういうことだったのか」と思いました。
窪:私もそうで、今まで考えてもみなかった自分に対してちょっとショックを感じました。
藤原さん:私たちの団体の存在を知る人はわずかだと思いますが、それでも年間で約500件の相談が寄せられます。
鈴木:どんな方からが多いのでしょうか。
藤原さん:被害者としては、アジアからの外国人女性が多いです。日本人女性も、最近は特に若年化しているのですが、数多く性的搾取に遭っています。ただ、相談が本人からである例はほとんどないですね。
鈴木:本人ではないのはどうしてですか?
藤原さん:自分が被害者だという意識が持てていないのが主な原因です。あとは、加害者を恐れて。いくつかのパターンがあるのですが、海外の女性は、騙されて連れてこられたり、こちらで奴隷のように働かされていても、「日本への渡航のために莫大なお金を立て替えているんだ」などと言われ、返すべき借金があると信じて言いなりになっていたりします。日本人だと、若い子が恋愛関係になった人に要求されて風俗産業で働かされたり・・・。
窪:日本人女性の場合だと、「好きな人にいわれたから」と思って働いてということなのですか?
藤原さん:とてもひどい話ですが、多いですね。つき合っているんだから、彼のためにそれくらい、と思わされています。
鈴木:つまり、彼氏に働かされているんですよね?どうしてそんな・・・。
人身取引の背景にあるもの
藤原さん:実はとても根が深くて。もともと家庭内での問題を抱えている女性が被害に遭いやすい傾向があります。貧困や、親のDV、あるいは過干渉などで居場所が見つからない少女たちが、出会い系サイトなどで知り合った大人にやさしくされて信用してしまう。家出した少女が大人の罠にはまって被害に遭うケースは後を絶ちません。
と同時に、何不自由なく育った若い女性が、親しい関係になった人によるDVで心身が弱ったり、思い切った買い物をしてしまいローンを組んでしまったことをきっかけに、もしくは学費と生活費のために軽い気持ちで夜の仕事を始めて加害者と出会い、金銭の貸し借りや親密な関係を利用した束縛や暴力により、自分が考えもしなかったような状況に追い込まれてしまうケースもあります。
窪:そういう大人は、最初から彼女たちを働かそうと思っているのでしょうか?
藤原さん:はい。中には専門でそういうことをしているような加害者もいるんです。何人もの少女や若い女性に売春させて経済的に支配している。一種のDVですよね。
鈴木:先ほど、被害者なのに被害者という意識が持てていないとお聞きしましたが、女性の側も、「好きな人のためにしていることだから」と思って、これが犯罪だと気づかないんですね。
藤原さん:10代のころから10年以上、加害者の男性に売春させられ経済的に捧げてきたという女性も少なくありません。そうなると通常の判断ができなくなっていてもおかしくないですよね。
窪:確かにそうですね。第三者から見ても、強いられているのか、自ら選んでいるのか、判断が難しくて、なかなか犯罪だと証明できないのではないでしょうか。
藤原さん:おっしゃる通りなんです。でも、人身取引の相談を受ける私たちの団体が出会った女性たちの中には、自ら選んで、もっというと好んで風俗店で働いたり売春したりする女性はいませんでした。意思に反して働かされている女性は、私たちが思うよりも多いと思います。多くの文献でも明らかになっていますが、性風俗・売春産業の実態を見てみると、やはり家庭環境に問題を抱え、学校に行くこともできなかったり、貧困状態にあるとか、あるいは知的障がいがあるという人の割合が一定数必ずあります。ほとんどの場合において、社会が守るべき存在の女性がこの産業で働かされています。そんな女性の性を商品として売ろう、また、安易に買おうという社会であるのが根本的な問題です。
鈴木:その通りですね。日本はそのあたりの意識が低いのでしょうか。人身取引への取り組みが遅れているというのも、とても恥ずかしいと思いました。