研究テーマ

社会貢献を知ろう!「良品計画社員と学ぶ寄付先団体の活動」第31回

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第31回は、大規模災害時、NPO・企業・行政・地域と連携して、迅速で効果的な被災者支援を行うことを目的に設立されたシビックフォースさんにお話をおききしました。

いつくるかわからない「次の災害」に備える

9月1日は「防災の日」。そこからの一週間は「防災週間」とされています。1923年の9月1日に関東大震災が起きたことから、また、この時期に台風被害が多いため、災害への日ごろの備えを怠らないように制定されました。世界有数の災害大国に暮らす私たち。被災者になることなく一生を過ごせる保障は、誰にもありません。次にくる災害に対し、一人ひとりはもちろん、組織的にどう備えるべきか、被災地をどう支えるべきか、ごいっしょに考えてみましょう。

プロフィール

シビックフォース

シビックフォースは、国内の大規模災害時に、迅速で効果的な支援を行うための、NPO/NGO・企業・政府・行政の連携組織です。災害の被害状況をいち早く把握して「一人でも多く、少しでも早く」救うため、災害が起こる前から協力体制をつくり、備えています。東日本大震災では、発生直後から活動を開始。ネットワークを活かし、現在も復興支援に携わっています。また、同様に地震の多いアジアの国々と連携した体制の確立もめざしています。

シビックフォースについて詳しくはこちら

  • 新海美保さん

    公益社団法人Civic Force
    (緊急即応チーム)
    広報・渉外部長

    愛知出身。日本大学卒業後、インドの現地NGOでボランティア。05年~JICA青年海外協力隊の広報誌『クロスロード』、JICA広報誌、月刊誌『国際開発ジャーナル』の編集に携わり、08-09年『国際協力ガイド』編集長。企業のPR会社を経て、2011年9月から現職。

  • 長屋裕明

    良品計画
    総務人事担当 総務課長

    2001年入社。無印良品渋谷パルコへ配属後、店舗開発部へ異動。再びアリオ蘇我、丸井吉祥寺店など4店舗での店長経験と大型店の難波では副店長を歴任。昨年より、現職。社内の保守や契約管理、危機管理から株主総会などの総務・法務業務を担当。1児の父。

  • 川添秀夫

    良品計画
    生活雑貨部 エレクトロニクス・アウトドア担当 MD開発

    輸入商社よりグループ会社のRKトラックに入社。輸入卸業務に携わった後、2001年良品計画に転籍。衣服雑貨の調達担当から、店舗にて販売・店長を経験。その後、生活雑貨ハウスウエアのDB業務経て、現職。趣味はアウトドア全般、衣食住全てを楽しむ事。

現場が混乱する緊急災害支援。「中間支援」が必要

東日本大震災でいち早く被災地に飛び
活躍した民間ヘリ

川添:シビックフォースさんは、災害支援を専門に行っていらっしゃいますが、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか。

新海さん:シビックフォースの最大の特徴は、行政やNGO・NPO、企業などがさまざまな支援活動を行う大規模災害時に、迅速な業務調整を可能にするコーディネーター機能を持っていることです。

長屋:実際に現場でレスキューを行うわけではないのですね。

新海さん:そうしたケースも起こりえなくはないですが、基本的には違います。例えば災害時に、メディアが避難所で寒さに震えるおばあさんを報道すると、翌日には市役所などにものすごい数の毛布が届く。でも、それを置く場所の確保も配布する手も足りなくて、仕方なく外に出したものが雨ざらしとなり、結局使えなくなってしまう。一方、別の避難所では、いまだに誰かが寒さに震えている・・・なぜこんなことが起こるかというと、行政も被災していて一時的な機能不全に陥っているからです。支援もあり、ある程度人もいるのに、それがうまくいかないのは、支援と人、行政をつなぐ調整役が不在だからなんですね。この役割を果たすために、シビックフォースは設立されました。

長屋:確かに耳にする話ではあります。物資も、人的な支援も偏って、特定の避難所だけが支援から取り残されたとか・・・。情報インフラも断たれていると、難しいですよね。

新海さん:そうなんです。災害の規模が大きくなればなるほど、間に調整役が必要になります。私たちは、災害が発生した直後にヘリを飛ばして被災地の状況を把握し、どこに何が必要かを判断します。同時に、さまざまなNGOや企業に支援協力を呼びかけます。

川添:いろいろなところと、平時から連携しておくんですか。

新海さん:平時から企業や行政などと協力関係を築いておくことは、震災前からのシビックフォースの活動の柱の一つです。これからさらに積極的に進めていきたいと思っています。東日本大震災のときには、寄付や物資提供など企業約600社にご支援いただいたのですが、震災前から600社すべてと密接な協力関係にあったわけではありません。ただ、事前に一度でも面識があると、いざというときにスムーズなコミュニケーションがとれる場面も多くありました。

川添:ちょっとでも知っている同士だと、ぐんとスムーズになりますよね。それにしても、ヘリを飛ばすとか、大がかりなことを緊急時に行えるのはすごいですね。

協力体制で、適切な役割分担

新海さん:東日本大震災発生直後、被災地の被害状況を把握し、支援に入る場所を選定するため、翌12日にヘリを飛ばしました。ヘリ運航にあたっては高橋ヘリコプターサービスという民間のヘリ会社が協力してくれました。この会社は震災以前から、被災地支援の役に立ちたいとおっしゃってくれていて、平時から緊急時のための訓練などを、一緒に行っていました。

長屋:そうですか。そんな事情もあるんですね。でも、ヘリコプターは確かに間違いなく有用ですよね。

新海さん:初動で、ヘリは欠かせません。ですが、私たちのような組織が、ヘリを所持するのは難しいため、本当に助かっています。実は、大きな災害の際は、陸路を移動して物資を運ぶ大型トラックなども必要です。東日本大震災のとき、ハート引越センターさんが協力要請に応えてくれ、計540品目380トンの物資を調達・配送することができました。

長屋:引越し屋さん、「なるほどその手が!」という感じですね。

川添:ヘリコプターの会社さんと訓練しているというのもなるほどな、と思いました。考えてみたら、緊急時にいきなり乗り込んで、というものでもないですよね。平時からやることは意外とたくさんありそうです。

災害支援はいつもケースバイケース

新海さん:大規模災害に備えて、さまざまなシミュレーションをしておかなければいけません。ヘリの訓練は、やってみないと気づけないことがたくさんあります。レスキューを行う団体ではなくても、それを行うプロに同行する機会は想定されるので、基本的な知識だけは持つようにしています。邪魔になっては本末転倒ですから。

川添:そうですよね。"緊急時"が頻発でもしない限り、大規模災害時の緊急支援の場数は踏めない。実際には頻繁に生じてもらっては困りますし、現実的ではないですね。そんな中で、いかにノウハウを蓄積できるか、いかに多様なシチュエーションを想定できるか、ですよね。

新海さん:まさにそうです。すべての災害を経験し、すべてのノウハウを持っている組織は、世界中どこにもありませんからね。シビックフォースもそうです。3.11以前、私たちは、起きる確率が高いと言われていた東海・東南海地震を想定して自治体やヘリ会社などとともに訓練してきました。東北で、しかもあの規模で起きるとは考えていなかったため、さまざまなことが「想定外」でした。

長屋:とりわけ東日本大震災では、専門家を含めて誰もがそうでしたよね。

新海さん:東南海地震について、さまざまなシミュレーションを行っていた道半ばというところで、あの震災が起きてしまったんですよね。適切に、迅速に判断し、対応できることもありましたが、手探りで行わなくてはいけないこともたくさんありました。

長屋:発生した場所の地理的条件や、季節などによっても、かなり違ってきますね。

新海さん:違いますね。ですから、前回の災害支援の経験に学び、活かせることと、それが通用しないことがあります。対策も地域ごとにする必要があり、通り一遍ではない防災訓練も重要です。