わき上がる情熱で描かれた絵も、のんびり描かれた絵も素敵
大栗:作家の皆さんは、これを職業にできているのですか。
柴崎さん:登録してもらっている作家さんは現在78名いますが、専業で取り組んでいる人はごく一部です。まるで職業画家のように、情熱を持って毎日創作活動をしている作家さんは素晴らしいです。でも、作業所で働きながら、週末に絵を描いている、好きでのんびり描いているような作家さんの作品もまた別の味わいがあったりして、素敵なんですよ。
大栗:そうなんですか。そこもやっぱり人それぞれなんですね。一般のデザイナーは専門の勉強をしている場合が多いですが、障がいのある方はどうなのでしょう。
柴崎さん:障がいのある人は持って生まれた才能だけで創作できると思われがちですが、そうではない場合も多いんです。生きていく中で育まれるものももちろんありますし、アトリエに行くと、新しい画材と出会い、スキルを習得したり。ただ、あるテーマを提示して、自由に描いてもらったりすると、想像を絶するものが出てくることがあるんですよね。そういう場に居合わせると、やはり才能としかいいようのないものに圧倒されます。障がいの有無にかかわらず、本当のアーティストに出会うと、そうなのかもしれません。
ケアしケアされる日常は、誰にでも訪れること
風間:私は前職でエンタテイメント系の仕事をしていた際、知的障がい者施設を訪問したことがあるのですが、「歌いたい」「音楽を楽しみたい」というすごいエネルギーに触れて、驚かされたことが印象に残っています。なんというか、すごいパッションを感じました。
柴崎さん:私も昔、すべてに介護が必要な状態でありながら、口で筆をくわえてでも描きたい人を目の当たりにして、そのパッションに心を揺さぶられました。自分もこのパッションに応えるような何かができないだろうかと思ったのがきっかけで、今もこの世界にいます。
大栗:そうしたパッションとは違うかもしれませんが、良品計画でも、障がいのある人を雇用していて、私も面接から立ち会ったことがあります。そのときにすごく感じたのは、その人たちの、働くことへの思いがとても真摯であることです。実際の現場でも、お掃除が好きだからと、9時からの勤務なのに8時から来て、丁寧にお掃除をしてくれていました。なんてありがたいんだろうと思いましたね。
柴崎さん:障がいのある人にとっては、無印良品は、もう、職場として最高の憧れの舞台ですよ。大栗さんのように、職場で実際に接して、共に働いた経験を持つ人が増えると、本当に素敵だと思います。
大栗:適性に応じた役割分担ができていれば、多様性は、むしろ強い組織をつくる重要な要素になりますよね。
柴崎さん:その通りだと思います。いつも思うのですが、障がいがなくたって、ある年齢になれば、介護をされる側になるわけです。特に高齢化社会の中では、人が人をケアするということが日常になる。人が人をケアするということはつまり、人が人を思いやるということにほかならないわけです。社会の中にはいろんな人がいて、支え合って生きていく、それが豊かさなんだって思います。
対談を終えて
大栗:宣伝販促室という部署がら、プロのアーティストと接する機会が多く、パッションに触れては尊敬の念を抱いてきましたが、今日は、アーティストとしての才能やパッションは、障がいのある人たちのそれも、少しも変わらないんだとわかりました。そして、エイブル・アート・ジャパンさんは、自分たちだけではその才能を生きていくために活用することができない人たちの作品を世に送り出す、素晴らしいお仕事をされていると思います。無印良品でも何かご一緒できることがないかなぁと、思いをめぐらせています。
風間:積極的に知識をえて、理解しようとしない限り、なかなか身近に出会うきっかけがない世界かもしれません。。自分にも、まだまだ理解が足りていないことがわかり、知らないってこわいことだなぁと思いました。見せていただいた障がい者による作品は、本当に質が高く、プロとして仕事をしていてもまったく驚かないです。適正に評価される世の中であるべきですよね。私も、エイブル・アート・ジャパンさんのやろうとしていることを知るほどに、共感が高まりました。
エイブル・アート・ジャパンは、2013年11月25日から2014年2月24日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
84人の方から合計28,000円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。
実施中の募金券はこちら